研究課題/領域番号 |
23360293
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
井上 翼 静岡大学, 工学部, 准教授 (90324334)
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研究分担者 |
島村 佳伸 静岡大学, 工学部, 准教授 (80272673)
矢代 茂樹 静岡大学, 工学部, 准教授 (00452681)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ |
研究概要 |
超紡績性CNTアレイ合成の理解を深めるため、CNT成長メカニズムのより詳細な解析を行った。特に、CVD法におけるCNT合成中の触媒付近の化学反応プロセスを解明するため、成長後のCNT触媒付近を丹念に観察し構造解析を行った。その結果、CNT合成において一般的な時間とともに触媒作用が劣化する現象を大幅に抑制する技術を見出した。これにより、CNT合成速度が大きく向上した。 CNT紡績糸の引張特性を向上させるために有効な方法を検討した。CNT同士の相互滑りが最も大きな破断原因であるので、CNT間結合を高める結合剤を用いる方法を実験的に検証した。その結果、いくつかの材料が効果的にCNT間の滑りを抑制し、紡績糸の剛性を高めることがわかった。ただし、結合剤の利用方法によっては紡績糸中心部へ結合剤が良好に含侵されないことがあった。今後、よりCNT紡績糸の機械特性を向上させるためには、よりCNT同士を強固に結合することが重要であり、そのためには結合剤の有効な利用方法を見出す必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CNT紡績糸の機械特性を向上させるため、CNT間相互作用を高めること、CNTをより高度に配列すること及びアスペクト比の高いCNTを合成することの3点が重要である。CNT間結合に関しては、いくつかの結合材料を用いてCNT紡績糸の後処理を行った結果、ある一定の成果が得られた。また、CNTアスペクトを高めるため、CNT合成技術の詳細を検討した。CNT直径をより高精度に制御することが可能になった。 一方で、CNT/樹脂複合材料の機械特性を高めるため、CNT複合材料の作製方法の確立や引張特性発現機構を理解することが大変重要である。これらについて、複合材料中のCNT含有量を制御して高める研究を実施し、高強度化が可能となることが分かった。また、複合材料中でのCNT糸の挙動を調べて、CNTファイバー複合材料の機械特性の理解が深まった。
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今後の研究の推進方策 |
CNT紡績糸の機械特性を高めるには、より高いCNT配向性を持たせることが重要である。そのためには、CNT合成時のいくつかの剛性パラメータとCNTアレイ構造の関係性を調査し、アレイ中においてCNTを高い精度で配列することが重要である。引き続き、触媒や原料ガスとCNT構造の関係性を詳細に調査する。 また、紡績糸中でCNT間相互作用を高めるために、結合剤をより効果的に作用させるための新しい取り組みを実施する。 CNT複合材料の引張特性発現機構を引き続き詳細に調査する。樹脂とCNT間の濡れ性やCNT表面の特性を調査する。また、CNTの結晶性や欠陥等と複合材料の機械特性の関連性を調べる。 一方で、CNT強化材として一方向CNTシートに加えてCNT紡績糸を使用し、CNT紡績糸を複合化した時の引張特性の挙動を調査する。高い強度と剛性を併せ持つ撚糸材はこれまでにない新規な材料であるため、それと樹脂との複合材料に関する機械特性においては未知のことが多い。構造解析を進めながら機械特性評価を同時に行い、新材料の機械特性発現機構を解明する。
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