研究概要 |
本研究では異種のポリマーどうしをマイクロからナノスケールに融合させる新しい手法を提案し,新規複合材料で新しい物性の発現,ひいては新たな機能性材料を最終的に創り出すことを目的とする.本研究では,ポリマーをナノスケールで構造化する手法の中で,真空引きや複雑な反応工程を必要としないエレクトロスピニング法に着目し,その実験条件の最適化を実施し,これまでに例のない液状ポリマーへのナノファイバー噴出による構造形成手法を考案した.当該年度においては本手法の確立を第一目標とし,柔軟性ポリマーと硬質ポリマーを用い,それらの分散状態が複合材料の力学物性に与える影響を予備検討した.本来,異種ポリマーをナノスケールで混合することは困難とされ,共重合やナノコンポジット化(層問挿入法やゾルーゲル法)がこれまで行われてきた.いずれも複雑なプロセスを必要とし,時間・コスト・労力の面で負荷がかかる.そこで電圧を印加することでナノビーズ・ファイバーを容易に作製できるエレクトロスピニング法を応用し,液状ポリマーへナノビーズ・ファイバーを直接噴出することでポリマーコンポジットを同時に作製でき,これまでの問題を解決できると考えた.ナノファイバーが作製される極板には,通常金属板が用いられるが,我々はそこへ絶縁性物質と導電性物質を組み合わせた極板を作製し,溶融・融解させたポリマーを設置した.その結果,ナノファイバーが液状ポリマーへ直接侵入することを目視で確認した.本研究では母材にポリスチレン(PS),ナノファイバーにポリウレタン(PU)を用いたPU/PSコンポジットと,母材にポリジメチルシロキサン(PDMS),ナノファイバーにポリビニルアルコール(PVA)を用いたPVA/PDMSコンポジットを作製し,それらの構造を電子顕微鏡で確認した.作製されたコンポジットは母材とナノファイバーの複合的性質を有することを力学物性測定により確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の変更は特にない.今後はナノファイバーの分散性を定量的に評価できる手法の確立が重要である.すなわち,現在までに行ってきた実験はこれらの手法を確立するための第一歩であり,ボトムアップ型の計画の確認であった.本研究において一部のポリマーを使い,ポリマーどうしをナノスケールで混合することに成功したため,今後はより具体的な目的を設定しその複合化へ向け材料選定をより厳密に行い,応用範囲および実用化範囲を拡大する.
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