研究課題/領域番号 |
23360295
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村上 恭和 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (30281992)
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研究分担者 |
進藤 大輔 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (20154396)
赤瀬 善太郎 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90372317)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 電子顕微鏡 / 相変態 / マンガン酸化物 / バナジウム酸化物 / 電荷軌道整列 / 磁区 / ドメインエンジニアリング / 界面構造 |
研究概要 |
ペロブスカイト型Mn酸化物で発見された、電場による電荷・軌道整列ドメインのスイッチング現象の機構解明を目指して23年度から研究を開始した。以下に24年度の研究成果を要約する。 (1) TEM内での電圧印加・電場観測技術の開発:ペロブスカイト型酸化物を集束イオンビームで薄片化するとともに、それにミクロンサイズのPt (Au)電極を設置して、擬似的なコンデンサー状の試料を作製した。この微細加工・微細配線技術の活用により、透過電子顕微鏡内で10000V/cmを越える高電場を容易に印加できる仕組みを確立することができた。一方、多くのペロブスカイト型酸化物は絶縁体であり、電子線照射によって試料が帯電する。この帯電による不要な電場情報は、試料への印加電圧に起因する情報(内部電位の情報)と重畳し、電子線ホログラフィーによる等電位線分布の決定を阻む大きな問題となった。これを解決するために、異なる印加電圧の下で収集したホログラムを使って位相情報の差分を求め、必要とする内部電位の情報を正確に求める解析手法を構築した。 (2) Mn酸化物、V酸化物のドメイン構造解析:集束イオンビームを用いてLa-Sr-Mn-Oの薄片化、並びに微小電極の設置を行った。透過電子顕微鏡内で試料を冷却し、110Kで電荷・軌道整列ドメインの生成を確認できたものの、単一ドメインであるために電場によるスイッチング(界面移動)効果の検証を行うことはできなかった。ドメイン構造は、冷却時に試料に負荷される圧力に依存するものと考えられる。一方、同様の手法で薄片化したMnV2O4の解析を行ったところ、軌道整列ドメインと磁区の両方に顕著な圧力依存性があることがわかった。いずれの結果も、ドメインスイッチングを誘発する要因として、圧力の効果を考慮すべきことを指摘しており、微細組織の外場応答に関して重要な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的の一つに、電圧印加した試料の内部の等電位線を、電子線ホログラフィーで正確に決定し、誘電率の均一性を考察することを掲げていた。平成24年度にこの課題を推進したところ、電子線照射に伴う帯電効果が予想以上に強いことが判明した。しかし、上述した位相データの演算を通してこの問題を解決できることを示し、電圧印加時の等電位線分布を精緻に観測できる技術を構築できた。Mn酸化物やV酸化物を使った軌道整列ドメインの解析でも、微細構造の外場応答性の理解に関わる重要な情報を得ている。以上の点から、本研究はおおむね順調に進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従って平成25年度も研究を進める。具体的には、軌道整列ドメインの核生成・成長機構、界面ダイナミクス、並びに外場応答性に関わる研究を、La-Sr-Mn-OやMn-V-Oなどの強相関電子系酸化物を用いて進める計画である。また、TEM内でのその場観察実験を行う上で要の技術となる、試料への微小電極の設置については、薄片化した領域への応力負荷を低減できるようなデザインの最適化を図る予定である。
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