研究概要 |
本研究は,高クロムフェライト耐熱鋼を対象とし,1)長時間強度評価の高精度化,および2)高温クリープ損傷プロセスの解明とその制御法の確立を目的とする。平成23年度は次の研究成果を得た。 1.損傷プロセスの解明: 高クロムフェライト鋼は長く伸びた亜結晶粒組織をとる。また,亜結晶粒界上や粒内には析出物(M_<23>C_6粒子,MX粒子)が存在する。クリープ中の組織変化の詳細な観察と解析に基づいて,亜結晶粒組織が変形や時効によって粗大化することが,主たるクリープ損傷であることを特定した。 2.損傷プロセスの遷移: 材料強度の観点での主損傷は微細な亜結晶粒組織の粗大化(回復)であるが,析出粒子も亜結晶粒界移動の抵抗となっており,亜結晶粒組織の回復に影響を及ぼす。析出物が凝集しない時間域で行う低温・高応力・短時間のクリープでは,ひずみ誘起の亜結晶粒組織の回復のみがクリープ損傷プロセスである。これに対して,高温・低応力・長時間のクリープでは,析出物凝集の結果,ひずみ誘起の回復に亜結晶粒組織の熱的回復が加わり,クリープ損傷速度が増加する。 3.クリープ破断時間の評価: クリープ破断時間t_rは次式で表現される。T_r=t_oσ^<-n>exp(O/RT)(σ: 応力,R: 気体定数,T: 絶対温度,t_o,n,O: 材料定数)上記の損傷プロセスの遷移に伴って,nとOの値が変化する。その結果,O値が小さい領域で破断時間の推定に誤差が導入される。長時間側の損傷機構を示す領域(O値が小さい領域)は,時効に伴う硬さ変化で特定できること,長時間領域のデータのみを使えば,1.2倍以内の高精度で長時間の破断時間が推定できることを明らかにした。
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