研究課題/領域番号 |
23360297
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
須藤 祐司 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (80375196)
|
キーワード | 半導体メモリ / 相変化メモリ / アモルファス / 結晶化 / 電気抵抗 / 電子状態 / 結晶化速度 / 結晶成長 |
研究概要 |
低融点・高結晶化温度を併せ持つGe-Cu-Te化合物を用いた新しいタイプの不揮発性PCRAMの創製を目指し、下記(i)~(iv)について研究を行った結果、以下の知見を得た。 (i)結晶化過程および相変化速度:X線およびTEM観察より、Ge_1Cu_2Te_3化合物(GCT)アモルファス相は、安定相であるGe_1Cu_2Te_3構造へと結晶化する事が分かった。GCTアモルファス薄膜の結晶成長様式を示差走査熱量計を用いた非等温測定より解析した。その結果、核生成支配で結晶化が進行する既存Ge_2Sb_2Te_5化合物(GST)アモルファスとは異なり、結晶成長支配で結晶化が進行する事が分かった。 (ii)アモルファス/結晶相変化に伴う電子状態・化学結合状態変化:硬X線光電子分光実験より、結晶相はフェルミ準位の位置に有限の状態密度を示し金属的であること、一方、アモルファス相ではフェルミ準位は価電子帯の上端の状態密度が完全に消失したところに位置していることが明らかになった。また相変化に伴うスペクトルの変化より、Geのs-p混成の変化がこの相変化に大きな影響を与えていることが推察された。 (iii)相変化挙動の組成依存性:結晶化温度(Tc)の組成依存性を調査した。その結果、GeTe中のCu濃度が増加するにつれTcが上昇する事が分かった。また、組成によっては二段階の結晶化過程を呈した。 (iv)繰返し相変化に及ぼすメモリセルの材料学的因子:本年度は先ず、単純なデバイスを作製しGCTのメモリスイッチング挙動を調査した。その結果、GCTにおいてもPCRAMに典型的なメモリスイッチング特性が得られた。また、GCTではGSTと比較して、消費電力を約10%削減できることが分かった。比熱や融解熱等の調査から、GCTデバイスの低消費電力はGCTの低融点(GCT:約500℃ vs GST:約600℃)に起因している事が分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GCT薄膜の結晶化メカニズムやGCTアモルファス(成膜まま)および結晶相の電子状態、化学結合状態の調査を順調に進めている。また、GCTデバイスにおいて、相変化メモリに典型的なメモリスイッチング特性も確認され、当初の計画通り、順調に研究は進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度も当初の研究計画通りに本研究課題を推進する。来年度は、本年度の知見を更に深めると共に、相変化速度や相変化による光学定数の変化を調査し、アモルファス相、結晶相の電子状態や化学結合状態の変化について考察する。また、アモルファス構造についても調査を進める。特に、アモルファス相については、成膜ままのみならず、再融解したアモルファス相についても調査し、スパッタリング成膜ままとの相違を明らかにする。更に、GCTデバイスのデータ記録速度等を調査しGCT材料特性との関係を明確にする。
|