Ge-Cu-Te化合物を用いたPCRAMに関する研究を行った結果、以下の知見を得た。 (1) 第一原理計算を用いて、GeCu2Te3の相変化に伴う構造変化に考察した。その結果、アモルファス相において、Cu-Cu結合、Ge-Cu結合およびTe-Te結合が大部分を占めていることが分かった。これまでの反射率測定実験において、通常の相変化材料とは逆に、GeCu2Te3のアモルファス相の反射率は結晶のそれよりも高いことを突き止めているが、第一原理計算によっても、観察結果と同様に、アモルファス相の反射率が結晶相のそれよりも高いことが確認された。更に、密度変化においても、観察結果と同様に、アモルファス相の密度が結晶相のそれよりも大きいことが第一原理計算により再現された。このようなユニークな相変化特性は、(a)Cu-Cu結合距離が短い、(b)Cu原子がthreefold ringを形成している、(c)密なCuリッチ領域が存在する、といったアモルファス構造上の特徴により、密なアモルファス構造を呈するために生じる現象であることが示唆された。 (2) (GeTe)1-x(CuTe)x擬二元系について、Ge-Cu-Te薄膜の諸特性に及ぼす組成依存性を評価した。その結果、Cu濃度の増加に伴い結晶化温度は上昇し、一方で、10at.%以上の添加では低下に転じる事が分かった。一方、反射率変化は、Cu濃度の増加に伴い低下し、25at.%程度のCuを含む薄膜では相変化に伴う反射率変化が生じない事が分かった。同様に、密度変化においても、25at.%程度のCuを含む薄膜は相変化に伴う体積変化を示さない事が分かった。PCRAMの繰返し書換え性に及ぼす相変化材料の体積変化が指摘されているが、相変化に伴う体積変化を示さないGe-Cu-Te薄膜は、長寿命PCRAM材料として期待できる。
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