研究概要 |
1.目的:近年,GHz帯域での電磁波障害が社会問題となり,この周波数帯域で機能できる電磁波吸収体が望まれている。しかし高周波域になると渦電流が発生して透磁率などの磁気特性が劣化するため電磁波吸収材料には,高い電気抵抗が必要とされている。本研究では化学的方法により比透磁率の高い強磁性アモルファスサブマイクロ粒子を作製し,さらにその表面を物理的なたはクロスリンク結合などの化学的方法によってNiZnフェライトナノ粒子でコートさせたヘテロ組織を有するハイブリッド粒子を用いて高周波域で機能する電磁波吸収体を目指す。本年度は,強磁性アモルファスFe-Bサブマイクロ粒子(AFBS)とNiZnフェライトナノ粒子(NZFN)が安定して作製できる条件を確立することを目的とした。 2.実験方法:直接還元法によりAFBS粒子,強制加水分解法でNZFN粒子を作製した。得られた粉末の磁気特性をVSMで測定した。また,高周波特性の測定にはネットワークアナライザーを用いた。さらに相の同定ならびに構造解析にはXRD,組織の観察にはSEMならびにTEMを用いた。 3.結果と考察:(1)直接還元法により作製したAFBS粒子の飽和質量磁化は153.3A・m^2・kg^<-1>であった。(2)AFBS粒子はXRDパターンよりアモルファス構造を有すること,SEM観察より平均粒径が0.3μmであることがわかった。(3)AFBS粒子は従来電磁波吸収体で使われているα-Feよりも高い透磁率μ_iを示した。(4)強制加水分解法によって作製したNZFN粒子の飽和質量磁化は64.9A・m^2・kg^<-1>であった。(5)NZFN粒子は,XRDパターンよりスピネル構造を有すること,TEM像より平均粒径16nmであることがわかった。(6)NZFN粒子は従来報告のあるFe_3O_4よりも高い透磁率μ_iを示した。(7)本年度で良好なサイズと磁気特性を示す粒子が作成でき,その作製方法も確立したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で良好なサイズと磁気特性を示す粒子が作成でき,その作製方法も確立したといえるので,次年度はこれらの粒子を結合させ,強磁性酸化物コート強磁性アモルファス金属サブマイクロ粒子を作製して磁気特性,高周波特性,組織の関係を調べていく。現時点では,次年度に向けての支障はないと判断される。
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