目的:近年、GHz帯域での電磁波障害が社会問題となり、この周波数帯域で機能できる電磁波吸収体が望まれている。しかし高周波域になると渦電流が発生して透磁率などの磁気特性が劣化するため電磁波吸収材料には、高い電気抵抗が必要とされている。本研究では化学的方法により比透磁率の高い強磁性アモルファスサブマイクロ粒子を作製し、さらにその表面をNiZnフェライトナノ粒子でコートしたハイブリッド粒子を用いて高周波域で機能する電磁波吸収体を目指す。本年度は、強磁性アモルファスFe-Bサブマイクロ粒子(AFBS)にNiZnフェライトめっきすることで高い透磁率を有する複合体の作製を試みた。 実験方法:直接還元法によりAFBS粒子を作製した。この粉末表面にスピネルフェライト膜を直接形成できるフェライトめっき法を行った。この複合粒子(AFC)をPVPと混合した後、圧粉、熱処理してトロイダル状に成形した。磁気特性の測定にはVSMとネットワークアナライザーを用いた。また組織観察にはXRD、SEM、TEMを用いた。 結果と考察:(1)圧粉体における電気抵抗率がAFBSより一桁以上高いAFC粒子の作製に成功した。(2)AFCはAFBSより磁化が低く、ポリマー複合体の比透磁率も低くなった。(3)AFCを用いたポリマー複合体は、電磁ノイズ抑制体(NSS)、電磁波吸収体(IMMA)としての電磁波吸収特性が、昨年度実施したAFBSやAFBSとNZFNの混合粒子のポリマー複合体より低かったが、高い電気抵抗率を示した。(4)AFC粒子を高充填したポリマー複合体では、比透磁率の実測値とBraggeman則より期待される計算値との差Δμ'rがほぼ0となった。(5)AFCを利用により、粒子を高充填した際に生じる導通と渦電流損失に伴う比透磁率の低下を抑制することが可能であることを見出した。
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