研究課題/領域番号 |
23360300
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮崎 修一 筑波大学, 数理物質系, 教授 (50133038)
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キーワード | チタン合金 / 超弾性合金 / マルテンサイト変態 / 形状記憶効果 |
研究概要 |
本年度はTi-Zr基をベースとして合金組成を系統的に変えたTi-Zr-Nb、Ti-Zr-Mo、Ti-Zr-Nb-Sn、Ti-Zr-Nb-Al、Ti-Zr-Mo-Snなどの様々な3元、4元系合金を作製し、変態特性と変形挙動の評価を行い、各添加元素が結晶構造、相安定性、マルテンサイト変態挙動、超弾性特性に及ぼす影響を定量的に調べた。まず、Zr濃度を10~50at%、Nb濃度を0~15at%と変化させたTi-Zr-Nb合金を作製した。合金インゴットを均質化処理後に冷間圧延を行い、溶体化熱処理を施し、マルテンサイト変態温度及び結晶構造を調べた。Nb濃度が8at%以上において99%まで冷間加工が可能で非常に優れた加工性を示した。マルテンサイト相は立方晶と六方晶の中間構造の斜方晶相であり、Nb濃度が少ないほど六方晶に近づいた。マルテンサイト変態温度及び変態歪みはNb濃度の減少に伴い増加した。変態温度を下げる効果はMo、Sn、Nb、Alの順で強く、MoはNbの4倍、SnはNbの1.5倍、AlはNbの0.5倍であることが明らかになった。引張試験により各組成の機械的特性を調べ、形状記憶特性及び超弾性を示す組成範囲を導いた。また、例えば、Ti-18Zr-15Nb、Ti-18Zr-14Nb-2Al、Ti-18Zr-11Nb-3Sn、Ti-18Zr-3Mo、Ti-30Zr-11Nb-2Sn,Ti-40Zr-9Nb-2Snなどで良好な超弾性を示した。AlおよびSnを添加した合金では、6%以上の回復歪みが得られ、既存のTi-Nb基の回復歪みの2倍以上の優れた超弾性を示した。また、SnはTi-Nb-Mo超弾性合金の特性改善にも有効であることが分かった。さらに侵入型元素がTi-Nb合金の超弾性に及ぼす影響を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の最終的な目的は、超弾性回復歪みが大きく(4%~6%)かつ超弾性変形応力が大きく(600MPa以上)でも安定なTi基超弾性合金を開発することである。初年度である本年度の研究で、Ti-Zr基をベースとしてNb、Sn、Alの添加量を調節することで、6%以上の超弾性が実現できた。これらの成果をまとめて特許出願を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後、合金組成の最適化、加工熱処理による内部組織の最適化により、更なる特性改善を目指す。特に、合金のポテンシャルを最大限引き出す集合組織の制御方法を確立する。また、侵入型元素の添加によりすべり変形臨界応力の上昇を試みる。これらのアプローチで、6%以上の大きな回復歪みを維持しながら、超弾性変形応力の上昇を目指す。
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