研究概要 |
本研究では,未だ実現していない鍛造TiAl基合金を世界に先駆けて実用化することを目標に,我々が構築した組織設計指導原理に基づいて,熱間鍛造及び組織制御した合金を用いて,高靭性化に資する鍛造合金の「き裂伝播特性」をその場観察により明らかにすることである. 平成25年度は,(1)Ti-Al-M1-M2 4元系の相平衡, (2)亀裂伝播に及ぼす組織の影響,(3)クリープ特性評価,の課題について取組んだ.その概要を以下に記す: (1)Ti-Al-M1-M2 4元系において,その実験状態図を精度良く計算によって再現するためには,Ti-Al-M1, Ti-Al-M2 各3元系からの当量は適用出来ないこと,また,M1/M2 の濃度比にが1に近い程,高温β相の相安定性が増大することを見出し,その結果に基づいて相互作用パラメータを最適化して,実験状態図を再現させた. (2)昨年度と同様に,SEM 内引張試験機を用いて,ラメラ粒界に意図的にβ組を残す織制御を施した試料の室温における亀裂の伝播のその場観察を試みた.その結果,β相中には多数のすべり線が観察されること,また,そのβ相は,それを挟むラメラ方位に差がない場合にも,亀裂の伝播抵抗として有効に作用することを見出した. (3)鍛造材の800℃におけるクリープ試験を行い,ラメラ組織安定化熱処理を施すと,α+γ→β相変態が遅滞し,そのクリープ破断比強度は,現用のNi基鍛造超合金U720及びIn718よりも優れることを見出した.すなわち,β相が必ずしも強度劣化の原因ではなく,優れた高温強度を得るには相安定性が最も重要な因子であることを実証した.
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