研究課題/領域番号 |
23360302
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
下村 雅人 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (20251853)
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研究分担者 |
桑原 敬司 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (50525574)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 酵素 / 酵素固定 / 共有結合 / ハイブリッド化 / 導電性高分子 / バイオ燃料電池 / 電極 / 酵素電極 |
研究概要 |
当該年度(第2年度)は,前年度研究で検討した酵素固定化電極(グルコースオキシダーゼを固定化した導電性高分子膜)をアノードとするグルコース燃料電池を試作し,発電試験を実施した。 まず,アノードおよびカソードとして,それぞれ,酵素固定化電極および白金黒電極を用いた燃料電池を試作し,純グルコース(濃度 1~50mM)を燃料として電流-電圧特性および電力-電圧特性の評価を行った。その結果,グルコース濃度10mM 程度で電池出力は飽和し,この濃度での電池の開放電圧は 0.45V であり,0.15V において電極 1cm2 あたり 60μW 程度の最大出力が得られることを確認した。次に,セルロース由来の粗製グルコースを燃料として,試作した電池による発電を試みた。タケ,イナワラ,スギおよびナラの酵素分解によって得た粗製グルコース(グルコース濃度 5mM)によって発電試験を行った結果,同濃度の純グルコースを燃料とした場合の 70~90% 程度の最大出力を得ることができ,原料バイオマスによる出力の差異は顕著ではなかった。 また,上述の研究と並行して,カソードとして用いる酵素固定化電極の作製について予備検討を行い,導電性高分子膜へのラッカーゼの固定化と酸素還元への適用を試みた。その結果,導電性高分子膜からラッカーゼへの直接電子移動によりメディエータを用いずに酸素還元を行うことができ,カソード用酵素固定化電極の実現に向けての見通しが得られた。 グルコースオキシダーゼを固定化したアノードについては,導電性高分子の性状と電極性能との関係を詳しく追跡し,その結果は技術・教育研究論文誌(電気化学会)に掲載された。一方,ラッカーゼを固定化したカソードに関する研究成果は Bioelectrochemistry誌(Elsevier)に掲載されることになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グルコースオキシダーゼを固定化した導電性高分子電極をアノードとするグルコース燃料電池を試作し,電流-電圧特性および電力-電圧特性等の基本特性の評価を行った。また,セルロース由来の粗製グルコース(タケ,イナワラ,スギおよびナラの酵素分解によって得た分解液)を燃料とした発電を試みた結果,同濃度の純グルコースを燃料とした場合の 70~90% 程度の最大出力が確認できた。さらに,カソードに関する予備検討を先行的に実施し,酵素固定化電極の作製について見通しが得られたことから,研究はおおむね順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成23および24年度の研究成果を踏まえ,当初の計画どおり次の事項を実施する。 (1) カソード用酵素固定化電極の作製と特性評価:アノード用電極の開発手法を踏襲して,金,白金等の貴金属電極に代わるカソード用酵素固定化電極の作製を試みる。電極基材としては電解重合法によって作製した導電性高分子膜を用い,ラッカーゼ,ビリルビンオキシダーゼ等の酵素を固定化し,グルコース燃料電池用カソードとしての適性を確認する。 (2) 酵素固定化電極(カソード)のグルコース燃料電池への適用:白金黒電極に代えて酵素固定化電極をカソードするグルコース燃料電池を構成し,動作条件と基本特性の評価および粗製グルコースによる発電試験を試みる。 (3) グルコース燃料電池の実用性評価と研究の総括:平成23~25年度の研究結果を総括し,酵素を固定化した導電性高分子電極(アノード,カソード)の適正構成およびこれらを用いたグルコース燃料電池の実用見通しと今後の課題について取りまとめる。
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