研究概要 |
当該年度(第3年度)は,前年度までの研究において取り組んだバイオ燃料電池用アノードの開発手法を踏襲して,金,白金等の貴金属電極に代わるカソード用酵素固定化電極の作製を試みた。 まず,電解重合法によって作製した導電性高分子膜を電極基材として用い,酸素還元酵素(ラッカーゼ,ビリルビンオキシダーゼ)を共有結合によって固定化し,グルコース燃料電池用カソードとしての適性を評価した。2,2'-アゾビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)をメディエータとして酵素固定化電極の酸素還元能を評価した結果,いずれの酵素を固定化した導電性高分子電極によっても酸素還元電流が得られることが確認できた。次いで,グルコースオキシダーゼを固定化した導電性高分子電極および酸素還元酵素を固定化した導電性高分子電極を,それぞれ,グルコース燃料電池のアノードおよびカソードとして適用し,発電特性の評価を実施した。その結果,ラッカーゼを固定化したカソードを用いた場合にはカソード 1cm2 あたり 25μW の出力が得られ,ビリルビンオキシダーゼを固定化したカソードを用いた場合には 50μW の出力が得られることを確認した。 また,前年度研究で先行検討した直接電子移動型のラッカーゼ固定化導電性高分子電極(Bioelectrochemistry誌に掲載)をグルコース燃料電池のカソードとして適用し,タケ,イナワラ,スギおよびナラの酵素分解によって得た粗製グルコース(グルコース濃度 5mM)によって発電試験を行った結果,カソード 1cm2 あたり,それぞれ,10μW,11μW,13μW および 8μWの出力を得ることができた。 一方,上述の研究と並行して,酵素の共有結合のための新規な導電性高分子電極の作製と評価にも取り組み,その成果は Reactive & Functional Polymer誌,Journal of Electroanalytical Chemistry誌およびEuropean Polymer Journal誌に掲載された。
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