研究課題/領域番号 |
23360303
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
樽田 誠一 信州大学, 工学部, 教授 (00217209)
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研究分担者 |
齋藤 直人 信州大学, 医学部, 教授 (80283258)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオマテリアル / カーボンナノチューブ / アルミナ / 複合体 / 微構造制御 / 機械的性質 / 骨伝導性 / 発泡体 |
研究概要 |
1.カーボンナノチューブ(CNT)により強化したアルミナセラミックスの開発: 繊維径の異なるCNTをアルミナへ複合化すると、繊維径が細いほど、複合体の微構造は微細化し、破壊靭性が高くなる傾向がみられた。しかし、繊維径が細くても、欠陥が多いCNTは、破壊靱性の向上には大きな効果がなかった。また、CNTの添加量を増加させると、複合体は微細化し、破壊靭性が大きくなる傾向であったが、CNTの添加が1.6wt%を超えると、CNTの均一混合が難しくなり、また、焼成中にCNTがバンドルを形成するため、複合体の微細化や破壊靭性の向上に大きな効果がなくなることがわかった。一方、CNTを炭化ケイ素へ複合化すると、CNTと炭化ケイ素は界面で強固に結合し、その強固な結合が複合体の破壊靭性を向上させた。これは、CNT/アルミナ複合体の高靭化メカニズムと異なる点であった。 2.CNT複合アルミナセラミックスの骨伝導化: 緻密なアルミナ焼結体を125μmのダイヤモンド研磨盤で研磨後、140℃で1時間あるいは5時間濃リン酸処理して、擬似体液(1.5SBF)中に浸漬すると、アルミナ表面に骨類似アパタイトが析出した。その他の研磨およびリン酸処理条件では、アパタイトはほとんど析出しなかったが、1.5SBFの溶液量を増加させることで析出した。また、濃リン酸処理後、さらに塩化カルシウム処理して、1.5SBF中へ浸漬するとアパタイトの析出が促進した。 3.CNT 3次元構造体の構築と骨類似アパタイトとの複合化: CNT-水ガラス-ソーダ石灰ガラス混合体から、CNT/ガラス発泡体を作製した。分散剤を添加することで、CNTは水ガラスやソーダ石灰ガラスと均一に混合した。しかし、CNTは主に発泡体の気泡中に偏在したため、目的の構造とは異なり、CNTを気壁中へ複合化させることが今後の課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度の交付申請書に記載した研究実施計画の内容を、十分に検討することができず、検討の余地を残したままとなった。特に、CNT複合アルミナセラミックスの骨伝導化では、CNT/アルミナ複合体については検討できなかった。これらについては、主要設備である真空炉が故障し、修理のため4ヵ月間使用できなかったことが響いた。
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今後の研究の推進方策 |
1.カーボンナノチューブ(CNT)により強化したアルミナセラミックスの開発: 複合体の微構造のさらなる微細化を、ジルコニアを添加することおよびγ-アルミナをアルミナ原料として用いることで、また、CNTのさらなる均一分散混合を酸処理,分散剤の添加,分級,ジェットミル処理を実施すること、で実現させ、複合体の機械的性質(主として破壊靭性と機械的強度)の向上を図るとともに、複合体の微構造と機械的性質との関係を解明する。また、これまで多層CNTを複合化してきたが、単層CNTを複合化させ、両複合体の微構造と機械的性質を比較・検討する。さらに、CNTがアルミナセラミックスへ与える影響が、他のセラミックスにもみられる一般的な影響であるのか解明するために、CNTをアパタイトセラミックスへ複合化し、その微構造変化と機械的性質を検討する。 2.CNT複合アルミナセラミックスの骨伝導化: 現在、アルミナ焼結体の骨伝導性を検討しており、その骨伝導性を示す表面処理条件が明らかになりつつある。今後、そのメカニズムを検討するとともに、CNT/アルミナ複合体についても骨伝導性を検討する。 3.CNT 3次元構造体の構築と骨類似アパタイトとの複合化: これまで、CNT-水ガラス-ソーダ石灰ガラス混合体から、CNT/ガラス発泡体を作製したが、得られているCNT発泡体は、CNTが発泡体の気泡中に偏在し、目的の構造とは異なっている。そこで、今後は水ガラス-ガラスを加熱融合した混合体とCNTとを混合するなど、CNTが気壁中へ複合化する調製条件を検討する。
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