1.カーボンナノチューブ(CNT)により強化したアルミナセラミックスの開発: アルミナ原料として、より微細な粒径を有するγーアルミナを用い、始めに微細な微構造のアルミナ焼結体が実際に得られるのか検討した。その結果、γ-アルミナ70%でα-アルミナ30%とした混合粉末から、より微細な微構造のアルミナ焼結体が得られた。ここにCNTを0.4wt%添加して、1350℃で真空焼成およびHIP処理すると、緻密な複合体が得られた。しかし、その微構造は、γ-アルミナを用いずに複合化した場合とほとんど変わらなかった。次に、塩化ジルコニウムあるいはZr-n-ブトキシドを用いてCNTへのジルコニアのコーティングを試みた。その結果、塩化ジルコニウムを用いると、CNT表面に析出するジルコニアは極わずかであったが、Zr-n-ブトキシドを用いると、CNT表面にジルコニアが比較的均一に析出した。これを1000-1200℃で真空焼成すると、ジルコニアはCNT表面に残るが、一部はCNTと反応した。 2.CNT複合アルミナセラミックスの骨伝導化: 鏡面研磨した緻密なアルミナ焼結体から擬似体液(1.5SBF)中で骨類似アパタイトが析出する条件について検討した。その結果、鏡面研磨したアルミナ焼結体を140℃で1時間濃リン酸処理した後、80-100℃で塩化カルシウム処理し、1.5SBFへ7日間浸漬すると、アルミナ表面に析出物が生成した。しかし、析出量は少なく、同定することはできなかった。 3.CNT 3次元構造体の構築と骨類似アパタイトとの複合化: ゼラチンおよびアガロースをテンプレートとして、アパタイト多孔体の作製を試みた。その結果、5wt%のアパタイトが高分散したスラリーへ、アガロースを2-5wt%添加すると、気孔率95%の多孔体が得られた。ここへ、CNTを添加することで、CNT3次元構造体が得られると推測された。
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