研究概要 |
次世代の軽量構造用材料として期待されているMg-希土類(RE)-遷移金属(TM)系合金の優れた力学特性は,合金中の析出物相と密接に関連していると考えられているが,その詳細な役割については未だ不明な点が多い.そこで本研究ではMg-TM-RE合金中で新しく発見したOD(Order-disorder)構造という特異な積層構造をもつ析出物,OD金属間化合物相の相安定性を決定する要因,さらに相安定性と力学特性の相関を解明するとともに,このようなOD金属間化合物の結晶構造を記述するためのモデル構築をし,新奇OD金属間化合物相の強化相としての有効利用のための基礎確立を目的とした.本年度はまずMg-Al-Gd三元系OD金属間化合物について,OD理論による結晶構造の記述ならびに単純な構造を持つ構造多形の導出,構造の熱安定性の調査を行った.Mg-Al-Gd三元系OD金属間化合物相は,6層あるいは7層の最密原子面からなる規則原子配列構造を持つ構造ブロック(いずれもレイヤー群:P(-3)1m)が隣接構造ブロック間である特定の対称要素を満たすように積層することにより形成されることを確認し,OD-groupoid Symbolを用いた結晶構造の記述に成功した.またOD理論に基づき,比較的単純な構造を持つ構造多形(Polytypes of maximum degree of order : MDO多形)を決定した.さらに高温長時間の熱処理によりMDO多形のうち1Mタイプ(空間群C2/m)のものに収斂する傾向を実験的に確認するとともに,VASPコードを用いた第一原理計算による安定構造の検討を行った.次にMg-RE-Al三元系合金(RE=Y,La,Ce,Nd,Sm,Dy,Ho,Er,Yb)について,OD金属間化合物の形成能と結晶構造の安定性について調べ,いくつかの系においてMg-Gd-Al系OD相と同じOD-groupoid symbolで記述される結晶構造を有するOD金属間化合物相が形成することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していたMg-Al-RE系三元系合金中のOD金属間化合物の結晶構造の決定に成功したとともに,いくつかのMg-RE-Al三元系OD金属間化合物相の形成能について十分な実験結果が得られている.またVASPコードを用いた第一原理計算による安定構造の検討,相安定性の評価も順調に進んでいる.また平成24年度以降の実行を計画していたマイクロピラーを用いた微小圧縮試験の予備実験にも着手をはじめていることから,当初の計画以上に研究が進展していると自己評価している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は平成23年度の研究内容を引き続き行うとともに,研究対象をさらにMg-RE-Ge系等に拡張させ,構造ブロック内の規則配列構造の長周期性が異なるものも含むMg-RE-TM系OD金属間化合物の結晶構造を包括的に記述する新しいモデルの構築を試みる予定である。また結晶構造が明らかとなったMg-Gd-Al系OD金属間化合物相を用いて,マイクロピラーを用いた微小圧縮試験による力学特性評価ならびに変形機構の解明に着手し,研究目的の早期達成を目指す,現在までのところ,研究遂行上の大きな問題点はなく,研究計画の変更の必要はない.
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