研究課題/領域番号 |
23360308
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安田 弘行 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60294021)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 構造・機能材料 / 形状記憶合金 / 超弾性 / 電子顕微鏡 / 中性子回折 |
研究概要 |
Fe3Al、Fe3GaといったFe基化合物の超弾性挙動について、各種その場観察法を駆使して、調査を行った。とりわけ、平成24年6月に、茨城県東海村にあるJ-PARCの中性子回折装置を用いて変形その場観察実験を実施した。その結果、Fe-23at%Al単結晶では、7%までの変形中もマルテンサイト変態に由来する回折ピークの出現は認められなかった。さらに、引張変形に伴う格子歪の変化は、応力-歪曲線の傾向と一致していたことから、第二相の形成は考えらない。さらに、回折線の半価幅は応力負荷・除荷に伴い可逆的に変化したが、これは転位の導入と消滅に対応している。また、検出器内の回折ピークの位置から、転位運動特有の結晶回転が生じていることがわかった。以上の知見から、Fe3Al単結晶の超弾性は、転位運動に由来することが明確となった。一方、Fe3Gaでは、組成や熱処理条件の異なる多結晶の変形その場観察実験を実施した。その結果、Fe-23~25at%Gaの組成で、いずれの場合も変形中に相変態に由来すると思われるピークがわずかに観察されたが、そのピーク強度はGa濃度や試料の熱処理条件に強く依存した。例えば、溶体化処理を施したFe-23at%Ga合金では、相変態に由来する回折ピークが比較的明瞭に観察された。したがって、同組成付近では、転位運動に加え、マルテンサイト変態が超弾性に関与していると考えられる。一方、Fe3(Al0.2Ga0.8)擬二元系多結晶では、変形中の相変態は確認されなかった。以上のように、Fe3Al、Fe3(Al0.2Ga0.8)合金では、転位運動に由来する超弾性が、Fe3Gaでは転位運動とマルテサイト変態に由来する超弾性が生じていることが示唆された。さらに、その場観察以外にも実験を行い、特に、Fe3Ga多結晶の超弾性に及ぼすGa濃度、変形温度、熱処理条件に関する知見を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は震災の影響で実験ができなかったJ-PARCのマシンタイムをH24年6月に確保し、変形中の中性子その場回折実験を行うことができたのが大きい。この実験により、超弾性の発現モードに関する決定的な情報が得られたといえる。特に、Fe3Ga合金において、マルテンサイト型の超弾性が発現する組成ならびに熱処理条件を、今回の研究で確定させることができた。なお、得られた知見の一部は、国際的に権威のある論文誌Materials Transactionsに掲載されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は最終年度となるが、よりマクロな超弾性挙動を捉えるために、SEM-EBSDを用いた変形その場観察実験を中心に実施したい。Fe3Gaの擬弾性挙動については、かなり把握できたため、残りのFe3Al、Fe3(Al,Ga)合金の超弾性の調査に注力したい。特に、現時点で最も情報の少ないFe3(Al,Ga)の超弾性については、熱処理条件を変化させることで規則度を制御した結晶を作製し、その超弾性挙動に及ぼす規則度の影響を調べる。さらに、その双晶擬弾性については、Al/Ga比の影響ならびに温度依存性を調査する。最後に、各超弾性モードにおける回復可能歪の理論的考察も行う。
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