研究課題/領域番号 |
23360309
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高田 潤 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (60093259)
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研究分担者 |
藤井 達生 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (10222259)
中西 真 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助教 (10284085)
菅野 了次 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 教授 (90135426)
草野 圭弘 倉敷芸術化学大学, 芸術学部, 准教授 (40279039)
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キーワード | ナノ酸化鉄 / 微生物由来 / マイクロチューブ / 非晶質構造 / Liイオン2次電池 / 正極材 / サイクル特性 |
研究概要 |
次世代のLiイオン2次電池では、高性能に加えて大幅な低コスト(現行の1/20~1/40)の正極材が求められているが、現在世界中で研究されている様々な材料(例:人工合成酸化鉄ナノ粒子)はこれらの条件を満さず、新しい画期的材料の開発が喫緊の課題である。本研究では、これらの課題の解決を目指して、従来自然界で不要物であって材料学的な特徴が不明な微生物由来のユニークなチューブ伏酸化鉄("L-BIOX"と命名)を正極材として注目し、その特徴の解明と正極特性を検討した。その結果、次の世界で初めての成果を得ることに成功した。(1)BIOXは、1次粒子が直径約3nmの非晶質ナノ粒子からなる巾約30nmの繊維から構成された多孔質の直径約1μmのマイクロチューブであり、主構成金属元素比がFe:Si:P=0.75:0.20:0.05の水酸化鉄材料であることを明らかにした。また、(2)最先端高分解能分析透過型電子顕微鏡で詳細に検討したところ、BIOXが有機物を含む水酸化鉄/有機物ハイブリッド構造を有することを見出した。さらに、(3)Spring-8でのHEXRD測定から得られた構造因子S(Q)や上記(1)の化学組成、FT-IRの化学結合状態などを用いて計算機シミュレーションで検討した結果、Fe06八面体がランダムに繋がった非晶質構造を得た。(4)この様な特徴を有する酸化鉄は人工合成困難な従来知られていない材料であると言える。(5)正極特性は、現行のLiCoO2材料を上回る高容量(約170mAh/g)であるばかりでなく、高レート(5C,10C)でも極めて良好なサイクル特性を示し、現行材料を凌駕する材料であることを見出した。(6)in-situ XAFS実験から、充放電中Fe3+⇔Fe2+の可逆変化が起こっていることを明らかにした。以上の結果より、微生物由来酸化鉄BIOXは、人工合成出来ない特徴を有し現行正極材料を超える優れた特性を有し、資源的の豊富で且つ革新的な低コストを可能とする従来にない画期的な正極材料であることを明らかにし、学術的にも産業上でも極めて重要な驚くべき成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)これまで全く注目されていなかった天然の微生物由来酸化鉄BIOXが、予想以上の驚異的な優れた正極特性(高容量、高出力特性)を初めて発見し、現行材料の欠点(低出力特性、高コスト、希少資源使用)を克服できる可能性を見出し、学術上のみならず産業上も極めて大きなインパクトを与える。(2)このBIOXが有機/無機物質ハイブリッド材料であることを見出し、人工的に作製できない画期的材料が機能材料として高いポテンシャルを有することを初めて明らかにし、機能材料の新規材料設計への革新的提案を示した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)我々が単離に成功した鉄細菌単離株"OUMS1"を用いて、これが産生する酸化鉄"OU-BIOX"について、その特微を明らかにするとともに、Liイオン2次電池充放電特性を評価し、天然のL-BIOXの特徴および特性と比較検討し正極材への応用の可能性を探る。 (2)微生物由来酸化鉄BIOXが現行正極材料LiCoO2以上の優れた特性を発現するかの解明を試みる。特に、BIOX特有のナノ粒子とナノ階層構造、非晶質構造、多孔質などに注目して、人工合成ナノ酸化鉄との比較しながら発現機構を検討する。
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