研究課題/領域番号 |
23360310
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高木 節雄 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (90150490)
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研究分担者 |
土山 聡宏 九州大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (40315106)
中田 伸生 九州大学, 大学院・工学研究院, 助教 (50380580)
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キーワード | 鉄鋼材料 / 結晶粒微細化強化 |
研究概要 |
(1)供試材の製造ならびに結晶粒径の調整 本年度では0.25%Tiを添加して固溶炭素と固溶窒素を完全に除去したFe-Cr系、Fe-Ni系の各合金、ならびにFe-C系とFe-N系の合金を、それぞれ真空溶解によって作製した。適切な均質化焼鈍と熱間加工を施したのち、各種プロセスを経て結晶粒の調整を行ったところ、すべての合金系で様々な結晶粒径を有する等軸な再結晶フェライト粒が得られることが判明した。 (2)降伏強度と結晶粒径の関係についての調査 様々な結晶粒径に調整した各種合金を引張試験に供し、降伏応力と結晶粒の関係を調査したところ、添加した元素により結晶粒微細化強化の強化係数に及ぼす影響が異なることが判明した。Fe-Cr系合金では強化係数をほぼ変化させず、Fe-Ni系合金では強化係数を増大させる結果となった。またFe-Cr系に関してTiを排除し、数ppm程度のCを添加すると強化係数が大きく増加した。これは以前申請者が指摘した強化係数に及ぼすCの影響によるものであり、今回各種合金元素の影響を調査する当たり、Tiを添加しCの影響を完全に排除することの重要性が改めて確認された。 (3)三次元アトムプローブに供するサンプルの試作及び粒界偏析の観察 炭素や窒素の粒界偏析観察のための三次元アトムプローブに関しては新日鐵(株)において研究に着手しており、既にそのサンプルの作成に成功しており、粒界近傍での炭素・窒素の偏析を観察している。今後はこの観察結果を基に、粒界偏析の詳細な解析や他の合金元素での測定を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度交付申請書においてはFe-Si系、Fe-Mn系合金の溶製を検討していたが、今回11月からの採択となり時期的な面を考慮してFe-Cr系およびFe-Ni系の2種類の置換型合金元素の影響を調査した。ただ、三次元アトムプローブに関しては試作までを予定していたが、今回粒界偏析の直接観察を捉える事が出来、当初の計画以上の成果を得ることが出来た。その為、研究の進展を考えると(2)おおむね順調に進展しているが妥当であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度以降は、H23年度に行ったFe-Cr系、Fe-Ni系に加えて他の合金元素(例えばSi、Mn、B等)に関して結晶粒微細化強化係数に及ぼす影響を調査することで、各種添加元素の固溶強化能と結晶粒微細化強化係数に関するデータベースを構築することを最終目標とする。また、三次元アトムプローブにより、各種元素の粒界偏析の定量評価やナノインデンテーションによる粒界強度の評価に焦点を当て、合金元素と結晶粒界の相互作用に着目して解析を推進していく予定である。
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