研究課題
研究代表者らは,これまで結晶粒を微細にするだけでなく,結晶の形態と方位を精緻に制御することで,衝撃特性を飛躍的に向上させた高強度鋼を開発してきた.その強靭鋼の更なる性能向上と加工プロセス設計を図るためには,静的なき裂感受性試験を通じ,き裂の発生条件,およびその後の進展という破壊挙動と組織の関係を明確にし,強靭な鋼を実現できる最適な組織設計指針を明示することが必要である.2年目に当たる今年度は,初年度に創成した強度1800MPa級の中炭素鋼を引き続き検討した.特性の異方性と結晶粒の形状の関係を検討するため,開発材(TF材)を700℃×1h.施すことでTFA材を創成した.TF材,TFA材,既存材(QT材)から10mm角×55mm長さの曲げ試験片を抽出し,室温および-196℃で三点曲げ試験を実施した.このとき,圧延方向に垂直なき裂を付与した場合だけでなく(1年目に実施済),棒材長手方向と垂直にダミー材を電子ビーム溶接することで,圧延方向と平行および45°方向のき裂を付与した曲げ試験片も作成し,同条件で試験に施した.また,棒材の長手方向とその方向に垂直な方向から小型の引張り試験片を採取し引張り試験を実施した.初期ノッチが棒材長手方向と直角にある場合,0.2%耐力σys=1.51GPa のQT材の強靱特性(σys×J(破壊エネルギ))は195GPa kJ/m2であった.一方,超微細繊維状結晶粒組織を有するTF材の強靱特性は9642 GPa kJ/m2となり飛躍的に向上する.結晶粒が比較的等軸なTFA材は2171GPa kJ/m2であった.これらの強靱特性の相違は,-196℃でも同じであった.ただし,初期ノッチの方向が棒材長手方向と平行になると,TF材の強靱性は著しく低くなることを示し,材料強靱化には結晶粒径の形状も重要なパラメータであることを明らかにした.
3: やや遅れている
2012年11月の破壊試験の結果、開発材の異方性を取得する試験が上手くいかず、試験片形状の変更と追加の材料創製実験の必要性が生じたため,当初の計画からやや遅れた.
懸案事項であった異方性取得の試験がクリアーでき,かつ追加の材料創製も出来ているため,今後当初の計画を加速させる予定である.
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Journal of Materials Science
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