研究概要 |
鉄鋼・チタン合金の摩擦攪拌接合(FSW)は従来の溶接の制約の障害を乗り越える革新的接合技術として注目されているが、未だ多くの課題を有し、実機適用への検討も行われていない。最大の原因は「安価で長寿命の接合ツールがない」ことにある。申請者らは、安価で長寿命を満たす唯一のツール材料として、新規Co 基耐熱合金を提案したが、実用化には更なる長寿命化が不可欠である。本研究では、Co 基耐熱合金ツールを用いて「ツール損傷はいかなる材料物性に支配されるのか?」と「FSW 過程でどのように損傷が進むのか?」を材料学的に解明し、長寿命なツール材に要求される材料物性・ミクロ組織を合金設計により作り出すための学理を究明し、安価で長寿命な接合ツール開発に資する普遍的な指導原理を確立することを目的としている。平成25年度前年度に得られた成果に基づいて、よりツール損傷が生じにくいCo基耐熱合金の合金設計およびツール性能評価に取り組んだ。平成25年度の成果は下記のとおりである。 平成24年度の成果に基づき、硬質相サイズが5μm程度であって、体積分率が2, 9, 24, 36%のCo基耐熱合金を試作した。試作したCo基耐熱合金中に存在する硬質相はいずれもμ相(Co7W6)であった。いずれもγ’固溶温度は1120℃以上であり、接合温度がこの温度を上回らないような接合条件にてFSW試験に供し、ツール損傷度を摩耗減量により評価した。その結果、硬質相量の増加とともにツール摩耗減量は低下し、硬質相の体積分率を9%から36%に増加させることにより、摩耗減量は2/3となった。以上の結果より、Co基耐熱合金の材料組織制御によりツール損傷が起こりにくい接合ツール材の作製に成功し、これらの知見を利用することにより更なる接合ツールの長寿命化の可能性が示された。
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