研究課題
逆変態温度における保持中に初期組織のマルテンサイト組織が焼き戻されて鉄炭化物が生成すると同時にMnがセメンタイトに濃化することが,オーステナイト逆変態に対して影響することが前年度までに示唆されたため,本年度は特にオーステナイト逆変態に及ぼす処理前焼き戻しの影響に注目して調査した.Fe-2Mn-C合金を用いて,623Kおよび923Kで1h焼き戻した試料と焼き戻し処理をしない試料を準備して,998Kでの逆変態挙動を比較した.その結果,623K焼き戻しを施すと逆変態速度が若干早まり塊状オーステナイト量が増加するのに対して,923K焼き戻しをすると逆変態が遅延され,塊状オーステナイトの生成が顕著に抑制されることがわかった.これは,623K焼き戻しにより析出した鉄炭化物がオーステナイトの核生成サイトとして働くと同時に,セメンタイトから核生成することでマルテンサイト境界に生じる際の結晶学的拘束を弱めるためと考えられる.一方,焼き戻し温度が923Kに高くなると,炭化物密度が粗大化によって減少することに加えて,アトムプローブ測定によって確認されたようにMnがセメンタイト中に濃化するため,オーステナイトの成長が炭素の拡散律速からMn分配を伴う成長モードに変化したためと考えられる.このことを確認するためにThermocalcを用いて,Mn分配を伴うオーステナイトの成長の可否を計算したところ,焼き戻しによってセメンタイト中にMnが濃化することで,オーステナイトの成長にはMnの分配を伴うことが必要であることが示された.
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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