研究概要 |
今年度は,運動エネルギーも求めるための粒子速度の計測および流体解析に注力し,検討を進めた.運動エネルギーに影響を及ぼす粒子速度に関しては,取り扱う粒子が極めて細かいことおよび粒子速度が速いことの理由から,数年前までは高速度カメラを用いてもその計測が困難であった.しかし,最近になり,粒子画像流速測定法(PIV)の発展によりコールドスプレー法による粒子速度計測の可能性が見えてきた.計測時には高速度カメラにより飛行粒子の観察も行った.その結果,飛行中の粒子が明確に観察できており,粒子速度の計測が可能なことが明らかとなった.これらの装置を用い,ガス温度,ガス圧力を変化させ,粒子速度の定量評価を行った.粒子計測の結果,速度は1,500m/sec以上となっている位置も確認された.数回の計測による再現性を確認しており,ばらつきの少ない計測が可能であった.粒子速度は,ガス圧力の上昇に伴い,顕著に上昇することが明らかとなった.一方,ガス温度を変化させた場合,温度上昇によっても粒子速度はほとんど上昇しないことが明らかとなった.これは温度上昇により,ガスの膨張が顕著になり,そのため粒子速度が上昇しないことが推測された.また,数値解析により,粒子速度の解析を行った.その結果,2MPaまでの解析結果は,実験結果とほぼ同等の結果を示した.しかし,ガス圧力が3MPaの場合,解析結果と実験結果は大きく異なった.これは解析に用いている粒子温度がガス温度に等しいと仮定しているが,実際の粒子温度はガス温度よりも顕著に低いことが考えられるため,この点を考慮することで実験結果と解析結果の合わせ込みを行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粒子画像流速測定法(PIV)を用い,当初の予定通りの実験結果を得ることに成功している.数値解析に関しては,高圧力側でまだ実験結果との一致は得られていないものの,低圧力側での評価は可能となっており,解析に用いる条件を最適化することでこの問題は解決するものと判断している.
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今後の研究の推進方策 |
粒子速度に及ぼす粒子形状,大きさ,粒度分布,および比重(密度)に着目し,評価を行う.粒子速度は,粒子が球状かブロック状かといった形状の影響,粒子径の大小による大きさの影響,および無数の粒子が同時に噴射されるため粒子の粒度分布の影響等を受ける.これら粒子パラメータの影響を評価するために,1パラメータのみを変化させて(他パラメータは固定),粒子速度の評価,および運動エネルギーの評価を実施し,定量的に,形状・大きさ・粒度分布が粒子速度へ及ぼす影響を明らかにし,無視可能なパラメータと無視できないものを明確にする.また,粒子の比重(密度)も粒子速度に影響を及ぼすことが予測されるため,材料の種類をアルミとステンレス鋼等で変化させる,あるいは同材料であっても気孔の有無によりかさ密度を変化させた粉末に関しても評価を実施する.
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