今年度は,最終年度であるため,前年度コールドスプレーにおける粒子付着メカニズムを解明するために開発した,単粒子衝突試験システムにより,Al粒子の粒子付着現象を評価し,基材材料の違いによる粒子付着速度(臨界速度)を求めた.開発した単粒子衝突試験システムは,直径1mmの単粒子をヘリウムガスによって加速し,高速で基材に衝突させる装置である.実際のコールドスプレー粒子は数十μm程度と微小であり,また大小様々な形状の粒子が無数に飛翔していることから,個々の粒子の速度や運動エネルギーを正確に評価することは極めて困難であった.本装置では,予め大きさや形状が明らかな球状の単粒子を衝突させることで,粒子の速度や運動エネルギーを正確に評価することが可能である.粒子の速度は,2つのレーザー間を粒子が通過した時間差から評価した.速度に応じ,粒子は基材に衝突した後にリバウンドするか,基材上に付着する.この際の粒子が付着し始めるときの速度(臨界速度)を定量的に評価した.本装置により,各材料の組み合わせにおける臨界速度を評価し,臨界速度に及ぼす材料因子を特定することが可能になった. 本装置を用いAl粒子における臨界速度を求めた結果,基材材料によって臨界速度は異なり,Al基材では約440m/s,Cu基材では300~350m/s,Ni基材では380m/s以下,Ti基材では臨500m/s以上等の結果を得ることができ,粒子速度と基材材料に対する粒子付着条件マップを構築することができた.ただし,本試験で評価された臨界速度と各材料の機械的特性(硬さ)の相関性は認めらなかった.付着粒子の詳細観察から,材料表面に生成している自然酸化皮膜の存在が影響していることが示唆された.
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