研究概要 |
本研究は,任意の応力/ひずみ経路のもとで,円管試験片が破断するまで,連続して応力-ひずみ曲線を測定することができるサーボ制御二軸バルジ試験機を開発することを目的とする.ひずみ速度の目標値を0.1/sとする. 円周方向ひずみの測定方法は,試験片の長手方向の中心位置において,3本の変位計(d_1, d_2, d_3)を円周方向に120^。ごとに配置し,それらの変位量の平均値dから円管外径を算定して,円周方向ひずみを算定した.管軸方向のバルジ曲率半径の測定方法は,試験片の中心軸を通る平面上に13mm間隔で3本の変位計(s_1, d_1, s_2)を配置し,両端の変位計(s_1, s_2)の変位量の平均値Sとdの差からR_φを算定した.管軸方向ひずみε_φの測定には,変位計を用いたひずみ形を新規に開発した.管が軸対称にバルジ変形すると仮定し,直径D,円周方向ひずみε_θおよび軸方向曲率半径R_φを算定した. 供試材として,0.8mmの冷間圧延鋼板(SPCE)を巻いて製作された外径46.2mmの円管を試験片とした.その結果,以下の知見を得た. (1)金属板材から円管試験片を製作し,軸力-内圧制御試験を行うことにより,大ひずみ二軸応力下での加工硬化特性を精密に測定する実験手法を確立した.さらに,伸び計を用いたひずみ計の開発により,塑性変形初期から破断に至る,任意の応力比における真応力-真ひずみ曲線の連続測定に成功した. (2)相当塑性ひずみ換算で0.5までの,鋼板の二軸応力-ひずみ曲線の測定に成功した. (3)Yld2000-2d降伏関数を用いれば,本供試材の加工硬化挙動を概ね再現できることが分かった. (4)成形限界線及び成形限界応力線の測定に成功した.特に,板材の成形限界応力線の直接測定に成功したのは,世界初の成果である. (5)予備的な試験として,590MPa級高張力鋼板の二軸バルジ試験も行った。応力比によっては,溶接部で破断する場合があった.溶接方法の検討が必要である.
|
今後の研究の推進方策 |
高張力鋼板及びアルミニウム合金板の二軸バルジ試験を実施し,本試験機の有効性を立証する.特に,これらの材料は溶接部の強度確保が難しいので,溶接部での破断を防ぐべく,最適な溶接条件の確立が重要である.また円管試験片の製造時において,曲げひずみが円周方向に均等に負荷されるような曲げ加工方法も検討する.
|