研究課題/領域番号 |
23360319
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
若井 史博 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 教授 (30293062)
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研究分担者 |
篠田 豊 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 助教 (30323843)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 焼結 / 粒界拡散 / 表面エネルギー / 連続体力学 / セラミックス |
研究概要 |
焼結で製造されるセラミック部品や素子は、結晶配向やミクロ組織制御によりその特性を向上できる。ミクロスケールの組織形成及びマクロスケールでの収縮を予測、制御するには、結晶粒の方位関係や粒界構造が焼結にどのように影響するかを知る必要がある。本研究は収束イオンビーム(FIB)により加工したミクロ試験片を用いた直接計測により単一粒界の焼結の動力学を探求し、それと巨視的な焼結挙動とを関連づけることを目的とする。ミクロ試験片実験について、本年度は面心立方金属に対して開発した計測技術をチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)に対して適用することを試みた。チタン酸ストロンチウムの双晶粒界に対してFIB加工によりミクロ試験片を作成した。しかしながら、異方性の強い本材料においてはチャネリング現象によって加工性が異方的となり所望の形状の試験片作成はできなかった。 巨視的挙動に関しては基板上への薄膜の拘束焼結ならびに焼結鍛造やホットプレスなどの加圧焼結において組織構造の異方性と粒界拡散や粒界エネルギーの異方性が影響を及ぼす。微視的な粒界の挙動が巨視的な焼結挙動に及ぼす影響をモデル化し、モデルがアルミナなどのセラミックスに対する実験結果とよく一致することを示した。さらに、粘性焼結における粒子形状変化に関するテンソルビリアル方程式を提案した。また微視的および巨視的スケールでの粘性焼結の力学挙動を焼結力と焼結応力の概念を応用して解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではfcc金属に対して、収束イオンビームにより加工したミクロ試験片を用いた直接計測により単一粒界に作用する焼結力と粒子運動の計測技術の開発に成功している。この技術をセラミックスに適用するため、チタン酸ストロンチウムをモデルとして試みたが容易ではなく、材料によって大きな加工性の違いが存在することが明らかとなった。今後は様々な材料に対して試みて、技術の適用性を広げる必要がある。このため、ミクロ試験片に関しては当初計画よりもやや遅れている。一方で、ミクロ試験片の焼結挙動の知識をもとに巨視的な焼結を推測する連続体力学的アプローチについては、当初の予定を越えた大きな進歩があった。このため、総合的に見るとおおむね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
微粒子凝集体の焼結においては、粒界拡散だけでなく、表面拡散や体拡散も同時に起こる。凝集体は焼結によって、すきまの多い構造から緻密な構造へと変化し、また、最初に異方的な形状をしていたとしても、しだいに等方的な形状へと変化する。今後は、ミクロ試験片の直接計測によって金属ならびにアルミナなどのセラミックスに対して微小変形や表面拡散が焼結の動力学にいかに影響するかを調べるとともに、単一結晶粒、単一粒界から出発して、最終的には複雑な微粒子凝集体の形状変化の動力学までを系統的に記述する理論の構築もめざす。
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