固体酸化物形燃料電池(SOFC)に代表されるエネルギー変換デバイスでは多くの場合、機能発現の場は二つの異なる固体と気相が交わる界面(三相界面)近傍であり、三相界面の拡張がデバイスの高性能化をもたらす。本研究ではこの三相界面の拡張を目的に、シングルナノ粒子を用いた複合化ボトムアッププロセスの開発とそれによる高活性なSOFC三次元界面機能の創製を行う。平成25年度は平成24年度に得られた知見に基づいて、独立分散したシングルナノ粒子と金属イオンが溶解した前駆体水溶液からシングルナノ粒子が物理的に架橋した骨格上に金属塩として析出する方法を確立した。このとき、(CH3)4NHCO3や(CH3)4NOHの有機塩基を助剤として加えることが、収率並びにナノレベルの複合化に有効であることを明らかにした。これにより、SOFCの代表的なアノード、カソードであるNiO-8mol Y2O3ドープZrO2(YSZ)、La0.2Sr0.8MnO3 (LSM)-YSZなどを合成することに成功した。また、得られた複合ナノ粒子を集積・厚膜化するコロイドプロセスと電極形成のための多孔質焼結プロセスを確立した。電解質支持型SOFCセルにおいて、三相界面の拡張に起因する電極反応抵抗の低減を観察するとともに、アノード支持型SOFCセルでは出力電力密度の向上が見られた。さらに、NiO-YSZをモデル系として、その配合比が微構造と電気化学特性に及ぼす影響を調べ、三相界面の拡張に不可欠な配合条件を明らかにした。その他、炭酸ジルコニウム錯体を用いることで、前駆体水溶液から均質な多元系沈殿物が得られることを見出し、NiO-YSZやLSM-YSZの複合ナノ粒子の合成に成功した。
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