研究概要 |
摩擦攪拌接合は材料学的には高温変形の範疇に属する塑性変形を基調とした金属材料の固相接合技術である。材料科学の観点から本接合法を理解し、個々の素材に最適な接合パラメータを科学的根拠を与えながら策定するためには接合中の素材の変形挙動を体系的に整理する必要がある。 本研究では、「摩擦現象が関与する接合において接合ツール周囲での高温塑性流動とその影響を反映した界面組織形成過程の体系的な理解」を主題とし、摩擦圧接,摩擦攪拌スポット接合ならびに摩擦攪拌接合における温度,応力,ひずみ速度の測定,接合材の結晶方位分布を中心とした組織解析を単結晶アルミニウムを用いて実施し、さらに塑性流動可視化実験による知見も取り入れて接合中の塑性流動・変形機構を基軸とした考察を展開して,これまでに報告されてきている現象る現象論的な実験事実に対して科学的根拠を与え、信頼性の高い新接合法開拓の突破口を開くことを到達目標とする。 本年度は、接合中の温度分布ならびに荷重測定を行い、接合中の素材の変形機構を推察する研究と単結晶アルミニウムへの摩擦攪拌スポット接合の2課題を実施した。接合時の温度は接合ツールに挿入した熱電対にて塑性流動がまさに進行している領域の温度を精密に測定し、6分力計によるトルクと軸荷重測定の結果より応力レベルを算出し、純アルミニウムの変形機構領域図中に摩擦攪拌スポット接合における変形状態を当てはめることに成功した。摩擦攪拌接合は従来言われている動的再結晶の他にクリープ現象も発現する可能性があること、すなわち超塑性変形も場所によっては発現することを見いだした。 単結晶アルミニウムを用いた摩擦攪拌スポット接合実験では、接合材の組織をSEM-EBSD法により詳細に方位解析し、試料内に2種類の応力状態が存在していたことを示す証拠を得た。また、素材内で場所により変形状態が異なることを実証した。
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