研究概要 |
本年度の研究実績概要を以下に示す. 1.素材の初期精度及び成形後形状精度に対するインプロセス矯正及びマイクロ精密鍛造プロセスを導入した.具体的に卓上型サーボプレス機械に小型超音波振動デバイスをダイセット内に導入し,振動援用による素材表面矯正を可能にした.また,素材表面を通電加熱することにより,寸法効果を利用した高効率な加熱システムを導入した. 2.多結晶金属薄材の振動援用プレス成形において,周波数,振幅,振動付与時間などのパラメータを変化させ,加振条件が素材変形に及ぼす影響を実験的に評価し,高密度エネルギー超音波振動の付与による表面での変形メカニズムの解明を図り,以下の成果が得られた. ・素材表面アスペリティの変形量に対して,振動による動的な負荷がプレス機による静的負荷より5倍大きく寄与する. ・素材表面アスペリティの変形が主に加振初期に起こり,加振による表面矯正は加工初めの0.1秒程度で完了する. ・黄銅材を用いた表面矯正実験では,表面平均粗さを最大75%低減でき,表面矯正の有効性が示された. 3.市販の有限要素法解析を用いて,振動負荷プレス成形のコンピュータシミュレーションを行い,加振が素材表面変形の評価を実施し,変形メカニズムの解明を図っている.今後の表面矯正の高効率化に向けた最適プロセス設計に反映してく予定. 4.素材表面を通電加熱することにより,素材変形抵抗の低減及び薄材の不均一変形の抑制により,高精度なマイクロ絞りや鍛造を実現した.特にマイクロ医療機器に適したチタンなどの難加工材に対して有効であった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度として,素材の初期精度及び成形後形状精度に対するインプロセス矯正及びマイクロ精密鍛造プロセスを立ち上げることができ,所望の効果が確認できたので,次年度のさらなる評価が可能となった.また,最適化のための数値シミュレーションも進んでおり,変形メカニズムの定量評価及びシステム最適設計を行う環境が整った.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究に関しては,当初の予定通りに推進していく予定である. 具体的には以下の項目を重点的に進める予定である. 1.実験結果とシミュレーション評価を組合せ,振動援用による表面矯正のメカニズムをより明確にする. 2.熱援用プレス成形と併用することにより,高精度なマイクロプレス成形プロセスを確立する. 3.マイクロバルブ等のような精密マイクロ部品のプレス成形による実部品の加工と評価を行う.
|