研究概要 |
本研究は,鉄鋼業や非鉄金属工業分野でみられる反応容器内部で気泡を媒介として起こる反応プロセスの高効率化を飛躍的に促進し,低炭素な反応プロセスを実現する方策を,水モデルを基にして提案することを目的として行っている.昨年度は,(1)気泡が溶融金属(水でモデル化)とスラグ(シリコン油でモデル化)の界面を通過する際に起こる気泡と溶融金属-スラグ界面の変形挙動に関する数値シミュレーションと,(2)反応容器に吹き込まれるガス噴流によって生じる旋回運動による攪拌に関して検討を行った.(1)に関しては,研究者らのこれまでの可視化実験から,気泡が油水界面を通過する際,5つのステージに分類することができることが明らかとなっているが,本研究では,油水界面を通過する気泡がオイル層(下層液体)に引き上げる水柱(上層液体)の挙動について詳細に検討し,特に,その水柱が分裂するときの引っ張り速度はTaylor-Culick速度に一致することを数値的に明らかにしている.この水柱が分裂することによって生じる水滴群も精錬反応の促進に繋がると考えられる.(2)に関しては,吹錬における造滓材の投入初期のスラグ層の流動についての水モデル実験と,ノズル吹き込み出口を偏心させた場合の均一混合時間(攪拌強度の指標)について検討した.造滓材の投入初期は,スラグ層は固体粒子群であると見なすことができること考え,本実験ではスラグ層を撥水剤を塗布し,濡れ性を悪くしたスチロール粒子群でモデル化し,溶融金属を水でモデル化した.その結果,濡れ性が悪いとき,吹き込み噴流が形成するスポウトアイの面積が小さくなり,溶鋼の汚染が少なくなる可能性がある.また,吹き込みノズルの位置を中心から偏心した場合,安定して旋回運動をする領域(液深さと吹き込み噴流の流量の関係)は狭くなるものの,浴内の循環流が大きくなるために,攪拌効率は向上することを均一混合時間の測定より明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,反応容器内部で気泡を媒介として起こる反応プロセスに関して,その高効率化を実験および数値シミュレーションを用いて模索することを目的として行っているものである.具体的には,(1)ノズルから吹き込まれる気泡の最適な離脱条件,(2)溶融金属内を上昇する気泡噴流による攪拌効果の促進,(3)溶融金属とスラグ界面を通過する気泡が生成する溶融金属滴とミクロな気泡群を制御することによる精錬反応の促進,(4)スラグ表面から放出されるスピッテイングの制御からなる.昨年度は,この研究(2),(3)に関して,実験および数値シミュレーションを用いて検討し,その成果を発表している.
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