研究課題/領域番号 |
23360332
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
柴田 浩幸 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (50250824)
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研究分担者 |
早稲田 嘉夫 東北大学, 多元物質科学研究所, 名誉教授 (00006058)
太田 弘道 茨城大学, 工学部, 教授 (70168946)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 珪酸塩 / 熱伝導率 / レーザーフラッシュ法 / 非架橋酸素 / ネートワーク構造 |
研究概要 |
表面加熱・表面測温短時間レーザフラッシュ法を用いて、CaO-Na2O-SiO2系、あるいはAl2O3-CaO-SiO2にCaF2を添加した場合の熱伝導率を測定した。CaOの割合が多いほど熱伝導率が増加することが明らかとなった。Na2Oの場合にはカチオンNa+と非架橋酸素が結合しシリケートのネットワーク構造が分断される。一方、CaOの添加の場合にはカチオンCa2+と非架橋酸素がイオン結合していると考えられる。このようなシリケートのネットワーク構造の分断状態の差により、CaOの含有量の多い組成の方が高い熱伝導率を示すと考えられる。Al2O3-CaO-SiO2系にCaF2を添加した場合の熱伝導率の変化は有意ではなかった。ただし、本測定では試料中のフッ素が気相中に蒸発してしまうため、フッ素含有量が測定中に大きく変化してしまっていた。本測定におけるフッ素量は2 mass%以下と考えられ、より多くのフッ素を含む試料では熱伝導率に影響を及ぼす可能性はある。これらの測定からも非架橋酸素やその結合状態が熱伝導率に影響を及ぼすことが支持されたが、非架橋酸素の影響を定量的に検討することは容易ではない。そこで、3次元モデルを作り、ネットワークの分断の効果を検討した。クリストバライト(SiO2)構造を単位胞として3次元格子に組み上げてモデル構成した。このモデル中のSi-O-Siの構造を切断した部分を導入した。モデルの上部と下部を一定値に保ち、定常温度分布を数値計算によりもとめ、伝熱量を計算し非架橋酸素の影響を定量的に検討した。その結果、非架橋酸素量の増大に伴い、熱伝導率が低下する傾向を再現することができた。しかしながら、実測値は計算値より小さくなっており、今後の検討課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CaO-Na2O-SiO2系の熱伝導率を測定し、CaOの割合が多いほど熱伝導率が増加することが明らかとなった。添加元素の違いにより、シリケートのネットワーク構造の分断状態に差が生じ、CaOの含有量の多い組成の方が高い熱伝導率を示すと考えられる。CaF2をAl2O3-CaO-SiO2系に添加した場合の計測も行い、CaF2の添加により熱伝導率が変化しないことも示せた。さらに、3次元的な珪酸塩のネット枠構造モデルを作り、数値計算により非架橋酸素の影響を定量的に検討することもできた。以上より本研究は概ね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)高温珪酸塩融体の熱伝導率測定 高温珪酸塩融体中のネットワーク分断状況を系統的に変化させるために、平成24年度は珪酸塩融体としてCaO,SiO2,Al2O3の三元系にネットワークを構造に影響を与えるNa2O、TiO2を含む珪酸塩融体の熱伝導率測定を継続する。さらに、粘性に特異な効果を与えることが最近報告されたアルカリ元素Kの熱伝導率に与える影響についても系統的に組成を変化させた測定を実施する。 (2)珪酸塩ネットワーク構造の評価およびモデルの構築 最近のNMRの珪酸塩の構造に関する研究結果も参考にし、FTIRの結果等と組み合わせて珪酸塩融体の熱伝導機構について構造との関係から検討を行う。伝熱のモデルに関しては、珪酸塩融体の構造を酸素とシリコンの結合を主な熱の伝播経路として、この結合の状態を3次元的に評価するモデルの検討を継続する。
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