研究課題/領域番号 |
23360333
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
杉山 和正 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (40196762)
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研究分担者 |
三河内 岳 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30272462)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | silicophosphate / calciumdisilicate / apatite / structure |
研究概要 |
これまで報告されたC2S-C3P系状態図によると、高温領域にα-C2S-C3P全率固溶体が示されていた。平成23年度の研究によって、本領域の低リン酸塩領域には長周期構造相が、高リン酸塩領域にはケイ酸塩四面体とリン酸四面体が無秩序配列する構造ランダム相が確認できた。すなわち、C2S相へのリン酸個溶は、濃度の低いところでは、Caの空席モデルが支配的であり、リン酸塩成分の大きいところでは、異なる構造相への相変化が基盤であることが判明した。 平成24年度は、さらにC2S相にリン酸成分が溶け込むメカニズムを原子レベルで解明するため、科研費の援助で強力なX線源を整備し、連携研究者の専門である電子顕微鏡法を組み合わせて、C2S-C3P長周期構造の発現メカニズムの解明を進展させた。そしてもっとも高温相であるα-C2S構造を基盤に、Ca席の欠損の導入とケイ酸およびリン酸四面体のランダム配置がリン酸個溶の基本メカニズムであることを結論することができた。 また隕石に存在するリン酸塩鉱物に関しては、これまでの予想とは異なりCV2S-C3P系で議論されているネーゲルシュミッタイトではなく、ケイ酸塩成分をかなり含むアパタイト鉱物を見つけることができた。隕石中のケイ酸塩成分を含むアパタイト系鉱物は、パイロキシンと共存するため、隕石の組織観察に基づきその特異な生成メカニズムの解明を進めた。現在のところ、実験室では隕石中に観察できる組成と同様のアパタイト構造を再現することができず、今後の研究の進展が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
C2S-C3P系鉱物の系統的な作製実験、主として冶金科学的に興味のあるリン酸濃度の領域では、Ca欠損とSiO4とPO4四面体の置換が同時におこり、α-C2S構造を基盤とするランダム構造が高温領域では安定であり、その高温構造が低温領域に急冷されたときに長周期構造を誘発すると理解できた。そして特定の組成領域では、このランダム構造が周期的に配列するいわゆるネーゲルシュミッタイト構造が発現することも分かった。しかし、それそれの構造が安定化する温度領域や、付随する四面体構造の配列規則性に関してに関しては、詳細な結晶構造解析が不可欠であると考えている。 また、隕石に存在するケイ酸塩を含むアパタイトに関しては、地球上に産するアパタイトとは異なり、ハロゲン元素および水酸基が観測されない。また、このようなアパタイトをC2S-C3P系の乾式合成では作製できず、その成因メカニズムに関しては不明の点も多い。
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今後の研究の推進方策 |
これまで解明した構造解析結果からは、C2S構造はCa席欠損を伴っても、基本構造を維持できることが分かっている。したがって、本物質に三価の陽イオンを添加し、Ca席欠損を作製しても、構造不安定化することはないと考えられる。希土類のイオン大きさから考えると、S2SやB2SおよびS2S-C2S個溶体などのホスト構造が興味深く、高温実験や相転移との基礎情報を収集したのちに、ErおよびZnなどの元素を溶かしこみ、基本蛍光特性を調査する計画である。 また、隕石に産するケイ酸塩を多量に含むアパタイトに関しては、初期発見した資料に産してFIBにて資料作製するなど、広範囲の隕石で、ネーゲルシュミッタイトが見つからないことを確認したい。また、より系統的な合成実験を行い通常の乾式プロセスにて隕石に産出するアパタイトが合成できない理由を解明していきたい。
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