研究概要 |
平成23年度の目標は,溶融酸化物を電解浴として,電極基板上にSiを電析する方法を見出すことであった,まず装置の作製から着手し,1100度程度の高温での電析が可能となる電気炉を作製し,高温使用に耐える電極周辺部および電解浴の設計・加工を行った,並行してケイ酸および塩基性酸化物らからなるスラグについて情報を収集し,熱力学的観点からSi電析が期待できるスラグ組成を探索した.Si製造プロセスの実用を考えた際には,電解浴は低温であることが望ましいが,溶融酸化物の融点を下げるためにはSiより還元されやすい金属(Na,Kなど)を加える必要がある.このため本研究では,Siのみが還元されうる高融点の電解浴を利用する場合と,Si以外も還元されうる低融点の電解浴を利用する場合の二通りに区別して実験を行った.前者において,Siと親和性が低い電極材料を用いて電析を試みた際には、還元されたSiは微細な形状で電極周辺に分散した状態で確認された.また,Siと合金化しやすい金属を電極基板とした際には、電極上で還元されたSiが速やかに電極内部へ拡散し,合金を形成することを確認した。一方,Si以外の金属が還元されうる電解浴を用いた実験においてもSi膜の形成は確認されず,この原因は還元された金属が電極表面で低融点の合金を形成したためと推測される.以上の実験を通して,高温におけるSi電析実験のための環境を整えるとともに条件探索において重要となる知見を得た.
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今後の研究の推進方策 |
前述のとおり,Siの電析条件を見出すことに時間がかかっているため,当初計画した目標の達成より遅れている.今後は,23年度に明らかとなった課題を改善するために,以下の方針で研究を進める.まず,電解浴に別の物質を添加することで,Si以外の金属を析出させない組成を見出す.また,Si以外の金属が伴って析出する場合においては,その金属が高温で蒸発することによりSiが濃縮されて膜を形成する反応を想定し,それに適した電極周辺部の設計を行う.
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