研究課題/領域番号 |
23360336
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
松本 幹治 横浜国立大学, 工学研究院, 名誉教授 (30011224)
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研究分担者 |
中村 一穂 横浜国立大学, 工学研究院, 准教授 (30323934)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 土壌 / リン / 抽出 / バイポーラ膜 |
研究概要 |
リン資源の循環利用のため、土壌からのリン回収システムの開発を行った。本年度は、①土壌からの各種酸・アルカリによるリン抽出条件、②バイポーラ膜による各種塩からの酸・アルカリ製造プロセスについて検討した。 ①では、対象とする土壌を田んぼ土壌とし、リンと強く結合していると考えられているCa,Fe,Alの抽出状態についてもICP-AESで分析した。リン酸の抽出量は抽出剤の種類により大きく異なり、硫酸を用いた場合が最も大きかった。また、抽出速度は速く約1時間で平衡に達した。リンと結合して存在していると考えられる金属については、Caは酸条件で溶出したがアルカリ条件では抽出されなかった。Alは酸・アルカリの両条件で抽出され、酸の方がより高い濃度で溶出した。Feは酸で溶出したがアルカリではほとんど溶出されなかった。Ca,Feは塩基条件では水酸化物を形成していると考えられ、溶出挙動は各イオンの溶解度のpH依存性にほぼ従う傾向があった。これら金属の溶出挙動とリンの抽出挙動の間には明確な傾向は見られなかった。 ②抽出液として期待される酸・アルカリからなる塩についてバイポーラ膜による酸アルカリ生成特性を検討した。検討した塩は塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムである。酸・アルカリ生成の電流効率は塩の種類により異なり、また濃度が増すにつれて低下することが分かった。塩化ナトリウムを用いた条件では塩酸と水酸化ナトリウムが1M以上の濃度で生成されることが確認できた。硫酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウムでは、各酸の生成は可能であったが、アンモニアは生成は難しくpH8付近よりも高くすることができなかった。これは、アンモニアの電離平衡の影響および水酸化物イオンの移動度が大きいためセル内から優先的に水酸化物イオンが抜けているものと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リン抽出検討では、多くの抽出剤(酸、塩基)および抽出条件について検討ができた。その結果、無機酸が特にリンの抽出に有効であることが明らかになった。一方、バイポーラ膜による酸・アルカリ製造では、NaClなど強酸と強アルカリからなる電流効が高いが、硫酸アンモニウムなどの弱塩基では電流効率が悪いことが明らかになった。膜による土壌スラリーのろ過ではチューブの内側に堆積し流路を閉塞する現象が生じることが明らかとなった。 ここまでの検討で、抽出、バイポーラ膜による酸アルカリ製造、土壌スラリーの固液分離特性について、各プロセスの挙動と問題点などが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、各プロセスの統合し、プロセスのクローズド化について検討する。ここまでの検討で、バイポーラ膜による酸アルカリ製造と抽出工程の組み合わせでは、電流効率の点から低濃度の酸とアルカリの使用が望ましく、また、最終目的からは弱酸の有機酸とアンモニアからなる塩が望ましいため、より温和な抽出条件について引き続き検討を行う。また、バイポーラ膜の電解セルに土壌スラリーを直接流入するために新たに酸・アルカリ製造室の設計製作を行う必要があるため、装置開発を検討する。土壌スラリーの固液分離工程では、膜のチャネル内への土壌の蓄積挙動に関してモデル化を行い、プロセスへの組み込みと効率的な分離条件について検討を行う。最終的にこれらを組み合わせてたシステムの設計を行う。
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