研究概要 |
ナノ粒子の工業的利用が推進される中で,ナノ粒子の製造現場で働く作業者へのナノ粒子の暴露が問題となっている。作業現場におけるマスクの着用は,最も有効かつ最終的な暴露防止手段であるが,マスクに使用されるエアフィルタのナノ粒子に対する捕集性能の評価法が確立されていないため,ナノ粒子に対するマスクの捕集効率に対して不安があることは否めない。そこで本研究では,エレクトロスプレー法によって発生させた大きさおよび物性の揃った気中マクロ分子をテスト用ナノ粒子として用いることにより,ナノ粒子のフィルタ捕集効率測定法を確立することを目的とする。 23年度は、エレクトロスプレーによって種々の気中マクロ分子イオンを安定に発生する条件について検討し,分子イオンの構造と電気移動度の関係を明らかにした。また、テスト粒子に含まれるダイマーやその他のイオンから目的とするマクロ分子イオンを分離し、単分散気中分子イオンを得る方法を確立した。さらに,レーザーアブレーションにより単分散Agナノ粒子を安定に発生させる方法について確立した。 一方、3nm以下のナノ粒子の検出法は帯電粒子の電荷を検出する方法に依らざるを得ないため,ナノ粒子の挙動に及ぼす粒子帯電の影響について検討した。その結果、誘電体(高分子)繊維からなるフィルタに荷電粒子を通すと、電荷の蓄積が起こり、時間とともに捕集効率が低下することが分かった。しかし、金属繊維フィルタでは帯電粒子でも電荷の蓄積はなく、マクロ分子イオンでは誘電体フィルタ、金属フィルタとも電荷の蓄積効果は見られなかった。 また、本研究の目的を達成するためには3nm以下の無帯電ナノ粒子の測定法の開発が不可欠である。 ナノ粒子エアロゾルと飽和蒸気を含む空気を混合することによって凝縮成長した粒子を検出するパーティクル・サイズ・マグニファイヤ(PSM)の改良を試みたが、無核凝縮のため2nmで10%程度の検出効率しか得ることができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
今後、帯電粒子、マクロ分子イオンの捕集によるフィルタへの電荷蓄積機構について明らかにする必要があるため、フィルタの表面処理等を行い、捕集実験を行う。また、気中マクロ分子イオンの中和法について検討する。マクロ分子イオンとしては,テトラアルキルアンモニウムイオンの他,アルキル鎖の一つが伸びたセシルトリメチルアンモニウムイオン,及び直鎖状のPEGを用い、3nm以上のマクロ分子イオンの発生を目指す。また,レーザーアブレーション等により5nm以下の単分散金属ナノ粒子を安定に発生させる方法について検討し、マクロ分子イオンの捕集効率と比較を行う。
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