研究課題/領域番号 |
23360341
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松坂 修二 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10219420)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 粒子 / 接触帯電 / 表面電荷 / 電界 / 静電気力 |
研究概要 |
粒子に働く各種付着力の中で,静電気力は遠距離でも働く力であり,引力だけではなく斥力を働かせることも可能なので,粒子を遠隔で操作するとき,非常に有用な力となり得る。電界を利用して粒子に静電気力を働かせるには,粒子を帯電させる必要があるが,帯電量の制御には,荷電と除電を同時に行える接触帯電が効果的である。ただし,粒子に働く付着力は粒子の運動を阻害するので,付着力を超える連続的な外力を加えて粒子を壁と繰り返して接触させる必要がある。本研究では,付着力に加えて重力,静電気力,振動に伴う力を組み合わせた複合場で,粒子の運動を制御できる実験装置を考案し,粒子の運動と帯電の同時解析により,粒子表面の精密電荷付与法を確立する計画であり,本年度は,昨年,設計・製作した装置を用いて,平行平板電極間に粒子を配置し,任意に電圧を印加した条件で振動を加え,粒子の表面を一様に帯電させることにより,平衡帯電を作り出した。帯電実験の準備として,粒子表面を予め一様帯電あるいは無帯電にすることは非常に重要であり,印加する電圧と粒子の平衡帯電の関係を解析した。また,樹脂コートにより粒子の表面を改質し,帯電特性を変化させて,仕事関数の違いによる影響を解析した。さらに,粒子の動的挙動に関係する表面状態をSEMで観察したのち,振動条件の違いによる粒子の運動状態への影響を解析するとともに,粒子帯電への影響も定量的に解析・評価した。帯電プロセスの理論検討では,単位接触面積あたりの電荷移動(示強因子)と全有効接触面積(示容因子)を考慮した帯電プロセスモデル(指数関数モデル)を構築し,モデル中に含まれる帯電係数は定量的に評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
帯電に関する実験的検討および理論的検討を行った結果,両者に整合性のある結論が得られており,本年度の研究は順調に遂行できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
デカルト座標系から円柱座標系に振動条件を変更できるように装置を改良し,より精度の高い実験結果が得られるようにする。ズームレンズ付き高速度カメラにより得られた画像から,粒子-壁間の接触頻度を求めたのち,帯電プロセスモデル(指数関数モデル)の適用によって得られた帯電係数を用いて,1回の粒子-壁間の接触における有効接触面積を推定する。また,粒子帯電に及ぼす粒子量の影響を空間電荷効果を考慮して評価する。各種試料粒子を用いて実験を行い,条件に応じた共通因子と非共通因子を抽出し,系統的に粒子帯電特性を評価する。多様な粉体に適応可能な帯電特性評価法および仕事関数と電界制御による粒子表面の精密電荷付与法を確立する。3年間の実験結果を整理し,理論的考察を加えて総合評価を行い,得られた成果を学会で発表するとともに学術雑誌に論文を投稿する。
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