研究課題/領域番号 |
23360342
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田門 肇 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30111933)
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研究分担者 |
鈴木 哲夫 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50243043)
佐野 紀彰 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70295749)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ゾル-ゲル法 / 一方向凍結 / 水蒸気結晶化 / ゼオライトモノリス / ゼオライト繊維 |
研究概要 |
本研究では,ゾル-ゲル法で合成したシリカ-アルミナ湿潤ゲルの冷媒中への一方向凍結,凍結乾燥によりモノリス状あるいは繊維状材料を作製する。作製したモノリス状あるいは繊維状の前駆体の構造はアモルファスであり,構造規定剤(SDA)を使用して,高温高圧の水蒸気雰囲気での結晶化(SAC)によってゼオライトを作製する。平成24年度は繊維状ゼオライトの作製を研究対象とした。 原料としてケイ酸ナトリウムを用いた。イオン交換樹脂を用いて原料水溶液のpHを調整し,得られたゲルを冷媒中に垂直に一定速度で挿入することにより,ゼオライト前駆体である繊維状シリカゲルを作製した。乾燥・焼成の後,必要に応じて含浸法によってアルミン酸ナトリウムを担持した。SDAを担持した前駆体を100~180℃で水蒸気結晶化を行った。結晶化後,600℃で焼成することによりSDAを除去した。なお,SDAとして水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAOH)を用いた。 一方向凍結と水蒸気結晶化により, 高結晶化度の中空状MFI型ゼオライト繊維を作製できることが分かった。また,SDA濃度,水蒸気結晶化温度および水蒸気結晶化時間を変化させることによって,結晶化度,結晶粒径を独立制御できることが明らかとなった。さらに,シリカ/アルミナ比を小さくすることによって,ゼオライト繊維を疎水性から親水性に変化できる知見が得られた。以上の実験的検討により,開発目標である繊維径:10~30μm,アスペクト比:1000以上,結晶化度:60%以上,BET表面積:300㎡/g以上,ミクロ細孔容積:0.15ml/g以上の繊維状ゼオライトの作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載の繊維状ゼオライトの開発数値目標は,繊維径:10~30μm,アスペクト比:1000以上,結晶化度:60%以上, BET表面積:300㎡/g以上,ミクロ細孔容積:0.15ml/g以上である。平成24年度に作製した繊維状ゼオライトは開発目標を満足する特性を示す。したがって,研究は順調に進展していることが分かる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,ゼオライトのモルフォロジーとミクロ細孔構造を独立に制御するために制御因子を明確化し,制御手法を確立する。 (1)ゼオライトのモルフォロジーとミクロ細孔構造の階層制御 モノリス状ゼオライトの連通気孔径および繊維状ゼオライトの繊維径の制御因子としては,凍結面での温度勾配と凍結速度が考えられるので,詳細な実験的検討を加える。さらに,一方向凍結時の熱流束シミュレーションを実施し,実験結果に理論的な裏付けを与える。シリカ/アルミナ比と構造規定剤(SDA)の構造がミクロ細孔構造の制御因子として考えられる。SDAとしては,水酸化テトラプロピルアンモニウム以外にクラウンエーテル類などゼオライトの種々の骨格タイプコードを実現する薬品を選定する。 (2)ゼオライトの高強度化と総括 モノリス状ゼオライトの高強度化のためには,気孔を形成する壁厚と結晶化度の制御が重要である。壁厚を厚くするには,ゾル-ゲル重合における固形分濃度の増加が有効と考えられ,50%のコロイダルシリカの使用を検討する。なお,荷重負荷による破壊試験によってモノリス状ゼオライトの強度を測定する。さらに,モノリス状ゼオライトや繊維状ゼオライトの工業的な生産法の確立に有用な知見を集積し,研究成果を総括する。
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