研究概要 |
活性コークスなどの炭素質多孔体にマイクロ波を照射した場合,導電性物質の細孔構造内部での電磁誘導効果で,微細孔空間や粒子間隙で誘起された大気圧非平衡プラズマが低出力でも生じることを見出した.このようなマイクロ波プラズマを化学反応場に利用することで,ラジカル注入に伴う反応の非平衡化による気相反応活性が著しく向上する.このような機能性に着目して,活性コークスなどの炭素質多孔体充填層を誘起源とするマイクロ波プラズマを利用して,タール成分のアップグレード化をはじめとする環境・エネルギープロセスに寄与できる反応試験を実施し,反応活性増大効果を反応動力学的に解明することを目的とする.本年度は,以下の研究を実施し,いくつかの成果および今後に繋げる知見が得られた. 1.マイクロ波入射波と反射波の干渉による電界強度のばらつきを抑制するために無反射ターミナルを導入したキャビティー内に石英ガラス管製反応管を設置し,石炭由来の活性コークスを誘導源とするマイクロ波大気圧アルゴンプラズマ発生限界とマイクロ波電界強度との相関関係を明らかにした. 2.有機溶媒として化学的に安定なため,難分解性溶媒のひとつに挙げられるベンゼンをタール模擬成分に用い,アルゴン中で気化したベンゼンのプラズマ分解試験を上記1.と同様の装置を用いて行った.その結果,常温雰囲気でも無触媒でベンゼンの分解さらには著しいすすの発生が観察された.今後このようなプラズマ中に鉄系触媒を導入することにより,炭素ナノ材料合成試験を実施する. 3.マイクロ波キャビティー観察孔に光ファイバーを挿入して,アルゴンプラズマ発光の分光計測を行うことにより,アルゴン励起発光スペクトル線が同定・確認され,プラズマイオン温度計測の準備が整備された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究代表者は,昨年(平成23年4月)に名古屋大学から岐阜大学へ異動になったため,新たな赴任先での実験室および分析器やガス類のユーティリティーを含む研究環境整備にやや時間を要したため,研究進捗に若干の遅れが生じた.しかし,すでに研究環境はこれまで以上に完全に整備され,また既往の知見ならびに研究方法論の経験から,次年度中には計画通りまたはそれ以上の進展が期待される.
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今後の研究の推進方策 |
「11.現在までの達成度」に記載の通り,初年度は研究進展の遅れが若干生じたが,実験室スペースも含めて,これまで以上に優れた環境が整備できたため,今後は加速的に研究推進を図ることができるものと確信される.これまでに有機溶媒として最も難分解性成分のひとつであるベンゼンのプラズマ分解予備試験を行い,無触媒・常温場でもベンゼンの分解と大量のすす発生を確認しており,これに鉄系触媒を導入することにより,炭素ナノ材料合成を実証するとともに,合成物の物理的および化学的評価を併せて実施する予定である.
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