研究課題/領域番号 |
23360346
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究分野 |
反応工学・プロセスシステム
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田川 智彦 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (10171571)
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研究分担者 |
山田 博史 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70293644)
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キーワード | 触媒・化学プロセス / 化学工学 / 触媒反応工学 / 反応分離工学 / マイクロ反応器 / 顕微赤外分光法 / 顕微紫外分光法 / in situ分析 |
研究概要 |
マイクロ触媒化学プロセスに関する反応工学の一層の展開のためには、分光学的手法を駆使した反応系のin situ解析が不可欠である。しかし、マイクロ反応器のような微少領域への分光学的手法の適用は通常の分光器では非常に困難である。そこで、本研究では、赤外から紫外にわたるin situ顕微分光法を駆使して、微少領域における反応条件下での触媒中間種の特定と動的特性の把握、反応器形状がそれらに及ぼす影響を解明し、しいては新しいマイクロ触媒反応工学の新展開に資することを目的とする。 本年度は基礎的研究として、多相系反応器の解析のためのガイドライン構造の実験的検討とシミュレーションを一部タイ国チュラロンコン大学との国際共同研究として行なった。ガイドライン構造による有機・水2相層流の形成が、反応を促進することを実験的に明らかにし、流体シミュレーションにより安定化の様子を詳細に検討した。一方、気相触媒反応系の顕微分光の実験的検討として、1)本補助金により顕微紫外分光光度計を購入し、シリコン基板上にマイクロチャネルを作成し、その表面に触媒を調整した測定用マイクロセルの試作を行った。フォトリソグラフィーの手法を援用してマイクロチャネルを作成し器壁表面に坦持白金触媒を調製した。石英製の窓板で系を閉じ、反応ガス流通用のキャピラリーを設置して測定セルとした。平板状ヒーターで測定ステージ上で加熱する工夫をし、反応中のスペクトルを測定できる体制を整えた。大震災の影響で機器の納入・稼働が遅れたため本格的な測定には至っていない。2)先行している顕微赤外分光の応用については、実際にプロパンとシクロヘキサンの脱水素反応を行い、π-アリル種を観測することに成功した。これらの知見は、マイクロチャネルを触媒反応器として応用するために不可欠な基礎的知見であり、反応機構の解明や、触媒を含めた反応器構造の最適設計への活用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガイドライン構造による多相層流の安定化とシミュレーション、および、顕微赤外分光法による微小領域における触媒表面のin situ観察については、ほぼ予定通りに進展している。ただし、顕微紫外分光法の応用については、大震災の影響により、機器の納入時期が遅れたため、計画よりやや遅れて進展している。
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今後の研究の推進方策 |
まず、遅れの出ている顕微紫外分光法の応用について優先して検討する。炭化水素の脱水素反応系をモデルに実験的検討を行い、顕微赤外分光法の結果と比較しつつ、表面吸着種や反応中間体についての観察を行い、その動的特性を明らかにする。こうした検討を通じて、顕微分光手法の、プロセス強化ならびに多相系マイクロ触媒反応工学への応用手法を確立する。流路構造が流動特性および反応特性に及ぼす影響について実験および流体シミュレーションによる検討を継続し、構造最適化のための設計指針を策定する。分光学的手法の援用により、より精密な反応システム設計の方法論を提案する。
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