研究概要 |
本研究においては,シリカ被覆した燃料電池電極触媒(=シリカ被覆Pt触媒)におけるシリカ被覆層中の物質移動速度を調べることが極めて重要である.Ptの溶出も含めて,電極周囲で起こっているほとんどの環象にシリカ層中の物質移動が関わっているからである.その物質移動速度,すなわちシリカ被覆層中の物質の透過速度を調べる上で重要なパラメータは,シリカ被覆層の厚さ,細孔径,および空隙率である.本年度は,これらのパラメータの制御と評価について検討した. シリカ被覆層の厚さ,細孔径および空隙率を制御するために,シリカ被覆層の原料であるシリコンアルコキシド(3-アミノプロピルトリエトキシシランとテトラエトキシシラン)の添加量および各アルコキシドの添加比を変化させてPt触媒のシリカ被覆を行った.その結果,均一な厚さのシリカ被覆層を2nm~50mmの範囲の厚さで制御することができた. さらに,シリコンアルコキシドの種類とその加水分解条件を変えることで,シリカ細孔径および空隙率を変化させる検討を行った.その結果,シリカ細孔径は約1nmであることがわかったが,定量性に問題があった.そこで細孔径に比例する指標を得るため,シリカ被覆Pt触媒を用いてアルコールの電気的酸化反応速度を調べた.大きい官能基を有するシリコンアルコキシドを用いて調製した触媒ほど,プロパノールの酸化反応速度が大きくなる傾向があることを見出した.すなわち,プロパノール酸化反応速度が,シリカ細孔径の大きさの指標として利用できることが示唆された. また,シリカ被覆層中の金属イオンの移動速度を評価するために,シリカ被覆Pt触媒を酸へ浸漬してPtの溶出速度を測定する実験も行ったが,定量的な結果を得るまでには至らなかった.
|