研究課題/領域番号 |
23360353
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究分野 |
触媒・資源化学プロセス
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小松 隆之 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (40186797)
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キーワード | 触媒・化学プロセス / 金属間化合物 / ナノ粒子 / 水素分子 / アンモニア合成 / 水素移動反応 / 選択的水素化 / d軌道中心 |
研究概要 |
金属間化合物触媒を調製し、以下の反応を行った。 (1)アンモニア合成Co系の非担持金属間化合物を溶融法で調製した。その結果ごく一部の化合物を除いて、単一相の金属間化合物から成る非担持粉末触媒が得られた。調製したCo系金属間化合物触媒を用いて、アンモニア合成反応を行った。Co純金属の粉末に比べて、CoY、Co_2Y、Co_3Y、Co_2Scなどがはるかに高い触媒活性を示すことが明らかとなった。反応前後の触媒の粉末X線回折を測定したところ、金属間化合物相が分離し、YNあるいはScNなどの窒化物およびCo金属微粒子が形成されていることが明らかとなった。反応中に形成されたCo微粒子が触媒活性点として作用し、共存する窒化物の電子的な影響でCo純金属粉末よりはるかに高い触媒活性を示すことが明らかとなった。 (2)H_2-D_2交換反応水素分子の活性化に及ぼす金属間化合物の物理的因子の影響を明らかにするため、Ni系の非担持金属間化合物触媒を用いて、H2-D2交換反応を行った。HD生成速度はNi粉末に比べて金属間化合物上ではやや遅いことが分かった。Ni-Ni原子間距離や格子定数などの幾何学的因子とHD生成速度には相関は見られなかった。一方、価電子帯のXPSスペクトルからフェルミレベル直下のd軌道中心を求めたところ、HD生成速度と相関をもつことが明らかとなった。 (3)水素移動反応シリカゲル担体上にRh系金属間化合物を高分散担持した触媒を調製した。これを用いてパラニトロスチレンと4-メチル-1-シクロヘキセン間の水素移動反応を行った。その結果、Rh/SiO_2上ではほとんど反応が進行せずビニル基が水素化されたエチルニトロベンゼンが少量生成したのに対し、RhPb_2/SiO_2上ではニトロ基がすみやかにかつ選択的に水素化され、パラアミノスチレンが高収率で得られることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンモニア合成および水素移動反応に対して、純金属より高い性能をもつ金属間化合物触媒が得られたことは、当初の目的である高機能触媒の創成に対する大きな前進である。また、水素分子の活性化に対して金属間化合物の電子状態が大きな影響をもつことが示唆されたことも、今後の研究の進展に貢献する知見である。
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今後の研究の推進方策 |
研究推進方策について、当初の計画からの大きな変更はない。今後はアンモニアの分解、水素移動反応、異性化反応などについて検討し、金属間化合物を元にした高機能触媒の開発を推進する。ただし、3族などの元素を含む金属間化合物の高分散担持微粒子を得ることは困難である場合が多く、金属間化合物相を単一相として維持したまま金属表面積を高めることが今後の課題である。
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