研究課題/領域番号 |
23360353
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小松 隆之 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (40186797)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 金属間化合物 / 触媒 / ナノ粒子 / 酸化脱水素 / ブタジエン / アミン / パラジウム / アルミナ |
研究概要 |
ナノサイズのPd系金属間化合物微粒子をシリカゲル上に担持した触媒を調製した。酸化脱水素に対する触媒特性を明らかにするため、ブテンの酸化脱水素を行った。Pd/シリカ上での生成物はほとんどCO2であったが、PdIn/シリカ上では高い選択率で酸化脱水素によるブタジエンが得られた。反応前後のXRD測定および酸化還元前処理した触媒の挙動から、反応条件下でPdInの一部が相分離してIn2O3種が形成されること、In2O3中の格子酸素がブタジエン生成反応の酸素源として用いられること、PdInとIn2O3の相互変換による酸化還元サイクルにより反応が進行することが明らかとなった。 次に、アミンの酸化脱水素によるイミン生成に対する触媒作用について検討した。ジベンジルアミンの酸化脱水素に対し、Pd/シリカはほとんど活性を示さなかったのに対し、Pd3Pb/シリカ上では目的生成物であるN-ベンジリデンベンジルアミンが選択率99 C-%以上で得られた。反応速度論的検討、吸着イミンのIRスペクトル測定などの結果から、Pd上での律速段階である生成物の脱離過程がPd3Pb上では大幅に加速されるため高い反応速度が得られると結論した。 さらに、金属との相互作用が強いアルミナ表面上で金属間化合物の単一相微粒子を得るため、液相還元法について検討した。均一な金属間化合物を得るには2種の金属種が同時に還元されることが望ましいとの発想から、金属前駆体および還元剤を変えて2種の金属種の還元電位の差を調整して化合物形成を試みた。その結果、還元電位差が小さいほど化合物形成の割合が高くなり、ほぼ100%金属間化合物からなる微粒子の形成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属間化合物の酸化脱水素に対する触媒特性の解明については、ブテンの酸化脱水素およびジベンジルアミンの酸化脱水素というかなり反応条件が異なる反応系に対して検討した。その結果、それぞれの反応に対し、PdIn/シリカおよびPd3Pb/シリカがPd/シリカ触媒より高い性能をもつことを明らかにした。さらにそれぞれの金属間化合物がなぜ高性能を示すかを追求するため、いくつかの実験結果を総合的に考察した。そしてこれらの金属間化合物を形成することにより、今までに報告されたことのないユニークなメカニズムで触媒性能が向上することを解明した。ただし、金属間化合物としていずれもPdを含むものについて主に検討したので、Pdを含まない化合物についての知見を得る必要がある。 一方、金属間化合物ナノ粒子の様々な担体上での合成に関しては、化合物を形成する2種の元素について、用いる金属前駆体どうしの還元電位差を少なくすることにより、アルミナ担体上で今まで調製されたことのなかった化合物(Pt3Co、Ni3Sn、PdBiなど)のナノ粒子合成に成功した。同様な手法でアルミナ以外の担体上でも金属間化合物ナノ粒子が得られると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
アルミナ担体上で金属間化合物ナノ粒子の合成に成功した手法を、他の酸化物担体に適用することにより、多種の担体上での金属間化合物ナノ粒子合成を目指す。これに成功すれば、得られた金属間化合物に対して、様々な担体からの異なる電子的影響を及ぼすことが可能となる。その結果、金属間化合物形成による幾何学的特異性と担体との相互作用も含めた電子的特異性が、金属触媒における触媒性能をどのように支配するかが明らかにできる。また、酸性酸化物および塩基性酸化物を担体として金属間化合物ナノ粒子の合成を目指す。このような触媒系を構築できればできれば、金属間化合物と酸化物の2元機能触媒としてさらに広範な反応への適用性が開けると期待される。 以上のような観点から、種々の酸化物に担持した金属間化合物ナノ粒子を触媒として、水素中微量COの選択的酸化、スチレンの酸化脱水素、アンモニアの分解、ニトロ化合物の官能基選択的還元などを行う予定である。
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