研究課題/領域番号 |
23360358
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
片田 直伸 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00243379)
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研究分担者 |
奥村 和 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30294341)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | ゼオライト / 固体酸触媒 / 重質油分解 / 脱アルキル化 / 部分水素化触媒 / シリカモノレイヤー |
研究概要 |
各種固体酸触媒と部分水素化触媒(MoO3/Al2O3)を組み合わせ,高圧水素下でのアルキルナフタレンの水素化分解を行った.当初の目標ではナフタレンをテトラリンまで部分水素化し,テトラリンの開環脱アルキル化によるアルキルベンゼンの生成を目指す予定であった.高圧の流通反応装置を作成し,予備実験で適した条件などを確立した.その上で検討したところ,固体酸触媒・部分水素化触媒・高圧水素の共存下で高速の脱アルキル化による長鎖アルカンとナフタレンの生成が見られた.この反応は固体酸触媒や部分水素化触媒の単独では促進されず,これらの共存下でのみ進行した.また固体酸触媒がUSYゼオライトおよびシリカモノレイヤーであるとき,アルカンの過分解や,アルキル鎖が部分分解したアルキルナフタレンなどは生成せず,高い選択性で無傷の長鎖アルカンとナフタレンが得られた.重質油中の多環芳香族からディーゼルに適した長鎖アルカンと化学原料やガソリンに適した「裸の」芳香族が別々に得られれば,性質の違いを利用して分離も可能で,重質成分の新しいノーブルユースへの途を拓く可能性がある.当初の目標のテトラリンの開環に必要な触媒特性もわかったが,予定した以上の成果が脱アルキル化で得られたので,今後は選択的脱アルキル化による重質油の分解と,これに適した触媒の研究を行いたい.常圧残油を用いた予備実験も開始し,データを取得できることまではわかっている. 量子化学計算としてはBEA, FAU (骨格外カチオン修飾物含む)の全サイト,アニオン,H, Na, NH4, C3H9型の全計算を行った.BEA型の赤外スペクトルを説明でき,酸点の強度と位置の分布をモデルで表すことができた.MFIについてはプロパンの分解活性が立体因子に強く影響されていることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DFTによる酸点のモデル化に対しては,研究開始時期の遅れのために当初予定の7割の進捗率である.重質油のモデルとしてのアルキルナフタレンの分解に対しては予定通りのデータ取得ができた上に,常圧残油の予備実験まで取りかかれた.さらに,選択的脱アルキル化反応が見られたことは予想以上の成果であった.したがって全体を平均するとほぼ予定通りと言える.
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今後の研究の推進方策 |
現実的に可能な最善のレベルでのDFT計算(HCTH関数の利用,波数補正)によってFAU, BEA, MFI, MOR, MWW全ての酸点モデルの構造と化学特性因子を計算し,構造が酸強度と触媒活性に与える影響を実験値と照合できる形で明らかにする.その上で,実験で偶然見つかっているシリカモノレイヤーの特徴を理論的に説明する. 反応においては常圧残油の高圧水素・固体酸触媒・MoO3/Al2O3の共存下における脱アルキル化反応を行い,特徴を明らかにする.高圧水素・固体酸触媒・MoO3/Al2O3の共存で起きるのが特徴なので,いままでのストーリーに拘らず,触媒の最適組成,Mo種とシリカモノレイヤーを同一の担体上に共存させる方法の検討などを変え,常圧算油およびモデル物質としてのアルキルナフタレンの反応を行って課題と実用性を明らかにする.いままでのアルキルナフタレンを用いた検討においては固体酸触媒としてシリカモノレイヤーとUSYを用いたとき選択性が高かった.このうちUSYはゼオライトの中では比較的大きな細孔を有するとはいえミクロ細孔性なので,アルキルナフタレン程度では高活性を示しても実用性は低いのではないかと予想される.したがってシリカモノレイヤーを中心に検討する.
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