研究課題/領域番号 |
23360360
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
山方 啓 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60321915)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 可視光応答型光触媒 / 光励起キャリアー / 再結合速度 / 電荷移動速度 / 時間分解赤外分光 |
研究実績の概要 |
バンドギャップの異なる二種類の光触媒を接合して、光触媒活性と光励起キャリアーの動きを評価した。紫外光型光触媒であるCuClにWO3を担持した複合型光触媒に400 nm以上の可視光を照射しても水素は発生しないが、400 nm以下の紫外光と可視光を同時に照射すると、可視光によって水素生成活性が約1.5倍向上することが分かった。CuClは紫外光を吸収して水素を発生するポテンシャルを有しているが不安定であり、容易に酸化されてしまう。一方、WO3は水やメタノールを酸化する能力を持つが、水素を発生するポテンシャルを持たない。したがって、WO3とCuClを接合させた系では、WO3表面で酸化反応が、そして、CuCl表面で還元反応が進行している可能性が高い。紫外光を照射させながら、可視光を照射すると、紫外光単独の場合より、水素発生の活性が向上した。これはWO3を励起することがH2生成に有効であることを示している。そこで、このメカニズムを調べるために、時間分解分光測定を行い、接合界面におけるで光励起キャリアーの動きを調べた。まず、市販の数種類のWO3とCuClのバンドギャップを励起して過渡吸収スペクトルを測定したところ、いずれのWO3でも、2600 cm-1付近にピークが現れ、CuClの場合には11000 cm-1付近にピークが現れた。これらはいずれも光励起電子による吸収に帰属されると考えられるが、WO3とCuClとではスペクトル形状が異なることから、どの粒子にキャリアーが存在するか区別できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バンドギャップの異なる異種光触媒を接合することで光触媒活性を向上させることに成功した。特に、水素発生に活性が無い可視光型光触媒に、水素生成活性のある紫外光型光触媒を接合させることで、可視光を用いて紫外光型光触媒表面での水素生成活性を向上できることを見いだしたことに重要性がある。今後は、この原理を応用することで可視光型光触媒だけでは無く、近赤外光に応答する材料を利用することで近赤外光を有効に利用する道筋を立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
光触媒反応活性を向上させるためには、異種半導体を接合させることが有効であることを見いだした。しかし、接合界面における光励起キャリアーの振る舞いに関してはまだほとんど分かっていない。そこで、本研究では、まず、時間分解分光測定を駆使することで接合界面における電荷移動過程を解析する手法を開発する。そして、界面電子移動を制御し、高い活性を有する光触媒の設計に貢献する。
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