研究概要 |
研究代表者は化学的手法でリパーゼの反応を制御する方法を研究し,酵素反応を活用する環境調和型有機合成方法,特にキラル合成法を研究してきた.加水分解酵素であるリパーゼは丈夫な酵素であり,貴金属触媒や固体酸と共存させてもアシル化を触媒することが知られており,現在では医薬品中間体の合成に工業的にも利用されている.そこで,固体酸・塩基触媒とリパーゼを共存させることで,固体酸・塩基触媒と酵素との協調による新しいキラル反応プロセスの開発を目指す.初年度は,「固体酸触媒とリパーゼの協調による貴金属触媒フリー動的光学分割(DKR)の開発」を検討した.申請者はイオン液体コーティング酵素をイオン液体中で使用すると,アシル化がトルエンや時イソプロピルテーテル溶媒よりもアシル化速度とエナンチオ選択性が向上することを明らかにしている.DKR反応を実現するためには歯の浮き室であるアルコールのラセミ化触媒とエナンチオ選択性が高くアシル化速度の速い校活性リパーゼの組み合わせを見つける必要がある.まず,1-フェニルエタノールをモデル基質にラセミ化を促進する最適ゼオライトを探索し,H-βVALFORCP811BL-25を見いだした.また,リパーゼには我々の研究室で開発したイオン液体コーティング酵素IL1-PSが良く,反応条件を最適化した結果,ジイソプロピルエーテル溶媒,オクタン酸=ビニルをアシル化剤に使用して収率75%,>99%eeで1-フェニルエタノールのアクタン酸エステルを合成することができた.望むDKR反応を実現することができたのでさらに反応基質の適応範囲を調べている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で設定した三つのテーマのうち,最初のアリールアルコールのDKR反応については,鍵を握るラセミ化力の強いゼオライトと強力なアシル化酵素の組み合わせを確定できた.現在は,基質分子の適応範囲を調べており,まもなく論文として公表できる予定である.また,この研究の過程でイオン液体コーティング酵素を使うためのイオン液体デザインを行った。さらに,イオン液体コーティング酵素を活用した含フッ素アリルアルコールの合成を行い反応基質に使用して遷移金属触媒不斉のアミノ化反応などを実現した.これらの成果は論文としてまとめて学術誌に発表した.
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