研究課題
加水分解酵素であるリパーゼは丈夫な酵素であり,貴金属触媒や固体酸と共存させてもアシル化を触媒することが知られており,現在では医薬品中間体の合成に工業的にも利用されている.そこで,固体酸・塩基触媒とリパーゼを共存させることで,固体酸・塩基触媒と酵素との協調による新しいキラル反応プロセスの開発となる動的速度論的光学分割(DKR)反応の開発が本研究の目的である.DKR反応を実現するためには反応基質であるアルコールの素早いラセミ化を起こす触媒と,エナンチオ選択性が高い高活性のリパーゼの組み合わせを見つける必要がある.1-フェニルエタノールをモデル基質にラセミ化を促進するゼオライトを探索したところ,H-βVALFORCP811BL-25がラセミ化触媒として優れていることを見いだした.ただし,ラセミ化機能は溶媒に大きく依存し,ホスホニウム塩イオン液体では全くラセミ化が起こらず,4級アンモニウム塩,もしくはイミダゾリウム塩イオン液体が必須であった.また,既存の有機溶媒についてもラセミ化機能を調べたところ,トルエン中でラセミ化が速く,ジイソプロピルエーテル中では比較的ゆっくりとラセミ化が進行することがわかった.しかしラセミ化の過程で2量体が生成するために収率が上がらないという問題点を克服することが極めて難しいこともわかった.ラセミ化速度が速いゼオライトは2量化能力が高く,はゼオライト細孔内で起こっていると考えられた.そこで,反応器質として嵩高い2級アルコールを探索した結果,インダノールを基質に用いると90%の収率でアシル体が得られたが,ゼオライト触媒による非エナンチオ選択的なアシル化が同時進行し,エナンチオ選択性が50%ee程度に低下するという新たな問題が生じた.そこで,反応条件をさらに最適化した結果,ヘキサン酸ビニルをアシル化剤に使用し,イオン液体とヘキサンの2相系で反応を行うことでDKR反応が起こることがわかった.
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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