研究概要 |
幹細胞工学によるトランスジェニック鳥類作製技術を確立するために、iPS細胞誘導技術を導入することでニワトリiPS細胞の樹立を目的として研究を行った。生殖系列キメラが作製可能なニワトリ胚盤葉期胚細胞や各発生段階における始原生殖細胞(PGC)に、マウスで報告されているiPS細胞の誘導に必要な遺伝子のニワトリホモログ(オーソログ)遺伝子をウイルスベクターにより導入し、新たに開発したニワトリLIFなどの未分化維持に必要なサイトカインを生産するフィーダー細胞上で培養することによって、iPS細胞を誘導することとした。本年度は、まずフィーダー細胞の樹立から研究を開始した。ニワトリ細胞のゲノムやmRNAから、ES細胞、iPS細胞、PGCの未分化維持に有効とされているLIF,bFGF,SCFのニワトリcDNAを採取した。これらの遺伝子を発現ユニットとして有するレトロウイルスベクターによってSTO細胞に遺伝子導入し、クローニングによって導入した遺伝子を高発現する細胞株を樹立した。また、これらの遺伝子を複数発現する細胞株の樹立も行った。ニワトリ胚盤葉期胚細胞を使って、これらの細胞株の未分化維持能力を測定したところ、LIFとSCFを共発現するSTO細胞をフィーダー細胞として用い、LIFとbFGFを生産するSTO細胞の培養上清を培地に添加した場合が最も未分化維持能力が高いことがわかった。フィーダー細胞の作製と同時に、iPS誘導因子遺伝子として報告がある、Oct4,Klf4,Sox2,c-Myc,L-Myc,Nanog,Nr5a2のニワトリホモログをこれまでの報告やゲノム情報から同定し、これらのcDNAをニワトリ細胞ゲノムやmRNAから取得した。これらの遺伝子を発現ユニットとして有するレトロウイルスベクター生産用プラスミドを作製した。これらのウイルスベクターを用いてニワトリ胚性繊維芽細胞(CEF)にiPS誘導因子の遺伝子導入を行い、上記のフィーダー細胞上で培養することによるiPS細胞の誘導を行っている。
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