研究概要 |
幹細胞工学によるトランスジェニック鳥類作製技術を確立するために、iPS細胞誘導技術を導入することでニワトリiPS細胞の樹立を目的として研究を行っている。前年度に作製した遺伝子導入フィーダーは、マイトマイシンC処理を行うと2週間をこえる長期維持ができないため、マウスやヒトES細胞やiPS細胞で実績のあるSNL細胞を親細胞として、ニワトリLIF, bFGF, SCF遺伝子を導入したフィーダー細胞を作製した。新たに作製したフィーダー細胞では、長期培養でも維持できることがわかった。この細胞を用いてニワトリ胚盤葉期細胞を培養したところ、以前作製したものより未分化維持能力が若干劣るものの未分化培養が可能であった。フィーダー細胞の作製と同時に、ニワトリ胚性繊維芽細胞にiPS誘導因子遺伝子を導入することによるニワトリiPS細胞誘導についても検討を行った。前年度に取得したOct4, Klf4, Sox2, c-Myc, L-Myc, Nanog, Nr5a2のニワトリホモログの遺伝子に、Glis1, RARα, RARβも加えて検討した。現在までのところ、適当な遺伝子の組合せによって未分化マーカーであるアルカリホスファターゼ陽性細胞の出現は見られるが、安定して継代培養可能な細胞株は得られていない。引き続きiPS誘導因子遺伝子の導入によるニワトリiPS細胞誘導実験を行っている。さらに、未分化維持に必要なニワトリ特有の因子を探索するために、分化万能性が知られているニワトリ胚盤葉期細胞で発現しているRNAを抽出し、大規模シーケンサーを用いた網羅的な配列解析を行っている。現在、配列データが出たところであり、ゲノム情報から転写産物遺伝子の同定を行い、リプログラミングや未分化維持に有効な遺伝子のスクリーニングを行う予定である。
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