研究概要 |
ニワトリcLIF およびcSCF 遺伝子を導入した遺伝子改変STO 細胞(STO/LS)によるニワトリ胚盤葉細胞培養では、胚盤葉細胞が未分化維持できることを示したが、長期培養での急速な細胞劣化が観察された。SNL 細胞をフィーダーとした場合では、長期培養においても劣化しないことから、ニワトリcLIF およびcSCF 遺伝子を導入した遺伝子改変SNL 細胞(SNL/LS)を作製し、この細胞をフィーダー細胞として、ニワトリ胚盤葉細胞を培養したところ、培養4 日目でも高い割合でアルカリホスファターゼ陽性を示し、胚盤葉細胞培養における未分化維持に有効であることがわかった。また、未分化維持やリプログラミングに必要な遺伝子を見出すために、胚盤葉細胞で発現しているRNAから、大規模シーケンサーを用いて網羅的な配列解析を行った。その結果、胚盤葉細胞では、38,520個の遺伝子が発現しており、バリアントを含めて2,949個の転写因子遺伝子を抽出することができた。同時に、胚性繊維芽細胞とES細胞を対照細胞としてDNAマイクロアレイ解析を行い、胚性繊維芽細胞をベースにして発現プロファイルを比較したところ、2倍以上の発現上昇した遺伝子が、11,634個(胚盤葉細胞)、10,835個(ES細胞)、0.5倍以下発現遺伝子が、9,631個(胚盤葉細胞)、7,835個(ES細胞)であった。大規模シーケンサーによるトランスクリプトーム解析で得られた転写因子遺伝子から、DNAマイクロアレイ解析を行った2,643個の遺伝子を比較したところ、胚盤葉細胞において、2倍以上の遺伝子発現量の増大が認められる転写因子遺伝子を227個同定することができた。これらの中には、iPS化における山中因子以外の遺伝子も含んでおり、未分化維持やリプログラミングに有効な遺伝子を含むものと考えられる。
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