研究課題/領域番号 |
23360374
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
中山 泰秀 独立行政法人国立循環器病研究センター, 生体医工学部, 室長 (50250262)
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研究分担者 |
上地 正実 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (90296426)
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キーワード | 再生医療 / 生体内組織形成 / バイオリアクター / バイオプロセス / バイオバルブ / バイオチューブ / セルフリーデバイス / 体内組織工学 |
研究概要 |
生体内環境をバイオリアクターとして用いて、自家細胞とマトリックス成分から、移植用組織体を自在に設計・誘導・再生するという全く新しい着想に基づいて、細胞を一切用いない、もう一つの再生医療の実現をめざし、バイオプロセスである「生体内組織形成術」を確立することを目的として、人工鋳型「セルフリーデバイス」の開発を中心に取り組んだ。具体的に以下に示す。 1)デザイン工学的な組織形成能制御:従来の生体内バイオプロセスを見直し、形成される組織体の壁厚を増強できる組織形成の促進化技術の開発を行い、移植操作性を向上できた。 2)光工学的な組織機能化制御:従来の生体内バイオプロセスで得られる組織体の主構成成分はコラーゲンと線維芽細胞であったが、バイオプロセスに光刺激を併用することで、エラスチンを加えることが可能となり、生体組織と類似の組織成分を構成可能とした。これまで受動的であったバイオプロセスを人為的に操作することが可能となり、細胞外マトリックスの作り分けの実現の可能性を得た。 3)細胞生物工学的な成熟化制御:得られた組織体内に含まれる細胞内にトロンボモジュリン発現遺伝子を導入すれば、線維芽細胞を血管内皮細胞様に改変することが可能で、組織体の抗血栓性を大幅に改善できることが期待できる。 別に、デバイス表面にエラスチン産生遺伝子を固定化させておくと、作製される組織体内部で弾性組織体が生成できることが期待される。それらの可能性について調べた。 4)マテリアル工学的な生体適合化制御:組織に損傷を与えないために水溶液で処理でき、さらに血液中で剥がれず機能できる感温性表面修飾剤の開発を行った。 本研究は、生体外での細胞操作による従来型の再生医療の対極と位置づけられ、安全性と経済性を兼ね備えた実際的な再生医療が実現可能と考えられる。完全な工学的な発信によって、移植は他人からという常識を覆す自己完結型の医療の実現をめざす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要課題に関しては、計画通りの研究進行によってほぼ目的を達成し、現在投稿中を含め、多数の英文学術雑誌に発表することができ、さらに多数の特許申請、取得に繋がったため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は当初の計画通り順調に進行しており、大きな問題点はなく、研究計画の変更は必要ない。今後は研究計画に従って、セルフリーデバイスの完成系を開発し、得られた人工組織体について、流体回路、ならびにマイクロメカニクス測定によって生体外機能を評価し、動物移植実験によってバイオプロセスの有効性を評価していく。
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