研究課題/領域番号 |
23360378
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
田川 雅人 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10216806)
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研究分担者 |
横田 久美子 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助手 (20252794)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 宇宙環境 / 原子状酸素 / 材料試験 / 高分子 / 材料劣化 / 複合効果 / 非回収宇宙環境試験 |
研究概要 |
本研究は試料の回収を伴わない軌道上宇宙環境試験方法を確立するため、①各軌道環境に対応した反応メカニズムの解明と、②衛星搭載試験装置の高精度キャリブレーション法の開発、さらに③オンボード小型センサーとその地上キャリブレーション法の同時開発による超小型衛星等を用いた高信頼性日本型非回収宇宙材料曝露試験法の確立を目指すものである。 平成24 年度には既存の理化学用QCMシステムにより各種宇宙環境下における材料劣化の原因究明を行うと同時に、前年度に導入した国産QCM システムを用いた実験を平行して行った。その結果、フッ素系高分子材料では紫外線による質量減少に明確な温度依存性が観察されること、国産宇宙用QCMの温度特性はリファレンスQCMとの差分を取得することによりシングルQCMシステムに比べて大幅に改善されていることが明らかになった。 しかしながら、昨年度導入した国産宇宙用QCMにポリイミドコーティングクリスタルを実装したところ、実装時にQCM表面にコンタミネーションが付着していることが判明した。そのため、製造方法の見直しならびにサンプルの再コーティングを実施する必要のあることが明らかになった。また、原子状酸素を照射時にはレーザーノイズによりQCM周波数が安定しない問題点があることが明らかになった。これは本QCMの宇宙空間での実使用には問題ないが、地上実験では大きな問題となることから、レーザーを使用しないマイクロ波型原子状酸素発生装置での試験研究を実施することが必要と考えられた。現在、宇宙用QCMを用いた実験を広範囲の温度環境で実験可能にするためのジグの設計・製作を引き続き進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の実験予定は順調に実施されており、今年度のデータを元にした来年度の本格実験に関する実験条件条件もほぼ固まった。想定外の要件としては、ターボ分子ポンプの故障が発生したが、平成23年度中での修理・交換を終えることができ、来年度の実験の実施には問題ない。平成24年9月、納入された国産宇宙用QCM表面に製造過程でコンタミネーションが付着していることが判明し、製造方法の見直し、ならびにサンプルの再コーティングを試みている。一方、原子状酸素発生時の高出力レーザーノイズによりQCMの発振が乱れてリアルタイム測定が困難であることが明らかとなり、平成25年1月に抜本的なノイズ対策の必要性が明らかになった。連携研究者が固有に進めている研究結果から、マイクロ波方式による酸素の解離と加速が適当であると評価されたため、マイクロ波方式の原子状酸素源の導入を進めているが、特注品であることから納期がかかり、年度末までの実験終了が困難であることが判明した。新たな装置を導入し追加実験を行うため、実験終了を平成25年6月、取りまとめ終了を平成25年9月と予定している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の研究方針は事前の予定と特に大きな変更はなく、①各軌道環境に対応した反応メカニズムの解明のための地上研究(複合効果や温度環境による変化)と、②衛星搭載用QCMの高精度キャリブレーション法の開発を進めて、超小型衛星にも適用可能な日本型非回収宇宙材料曝露試験法の確立を目指す。 現在のところ、国産宇宙用QCM表面へのコンタミネーション付着については、QCM実装に使用する接着剤を非加熱型のものに変更するなど、製造方法の見直しを行っている。また、レーザーノイズによりQCMの発振が乱れリアルタイム測定が困難である点については、マイクロ波方式の原子状酸素源での試験を実施する予定である。万一、マイクロ波型原子状酸素源の性能が不十分である場合には、バックアッププランとして、リアルタイム測定をあきらめて、レーザー間欠照射方式に変更することも視野に入れている。
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